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『おっさんずラブ』現象はなぜ起きたのか

マスメディアが苦手とする「狭く深い」ところにこそ商機がある時代

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 ドラマ不況と言われる中で、最近、大いに話題になったのが『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)であった。最終回とその前の週の放送中に、ツイッターで、「#おっさんずラブ」が世界のトレンド1位になった。主役の田中圭の写真集が次々に重版したり、同番組が発売したLINEスタンプが売り上げランキング1位になったりとビジネスの面でも成果が出ている。平均視聴率は4%と高いとはいえない数字が、なぜ『おっさんずラブ』はここまでネット上で盛り上がっていったのか言及してみたい。

非BLファンや恋愛ドラマファンがハマった

 テレビ業界はネットの反響に実はあまり関心がない。なぜなら、ネットで話題になっても視聴率上昇には関係がないことがほとんどだからだ。『おっさんずラブ』はDVDが売れて、利益を出せば、ヒット作と認定され、続編や映画化もあり得るが、現状は社内的な評価は高くないはずだ。

 しかし、私の目からすると、『おっさんずラブ』現象はネット上だけのものではなかった。放送期間中、リアルの場で私は何人もの女性たちから『おっさんずラブ』に対する熱い思いを聞かされていた。仕事の打ち合わせの席で、延々と『おっさんずラブ』の話をする女性もいた。

 無論、BLファンも『おっさんずラブ』に盛り上がっていたが、それ以外の女性たちも『おっさんずラブ』にハマっていた。特に韓流ドラマなどの恋愛ドラマを好んで見ている層が「春田と牧くんはどうなるんだろう?」と熱心に語っていたのだ。

人を好きになるのに性別は関係ない時代

 正直、私は4話ぐらいまでしか面白く思えなかった。それは私が恋愛ドラマは好きではないからだ。前半はコメディセンス光るサスペンス&ホラーだったので楽しめたが、後半はガチな恋愛ドラマとなっていった。それも非常に現代的な恋愛ドラマである。

『おっさんずラブ』に出演していた林遣都=2017年3月、東京都渋谷区拡大『おっさんずラブ』に出演していた林遣都=2017年3月、東京都渋谷区
 『おっさんずラブ』は主人公春田に片思いをする男女の姿を描いたラブストーリーだ。恋愛模様には、春田(田中圭)の幼なじみの20代女子、ちず(内田理央)も入っていく。春田は家事一般ができない男で、世話を焼いてくれる相手になびく傾向がある。春田がルームシェアしていた後輩男子牧(林遣都)は家事が完璧だが、ちずはそうではない。

 バイセクシュアルであるお笑い芸人カズレーザーは「好みの顔かどうかで恋愛感情が生まれ、性別は後回し」という趣旨を語っているが、春田の場合は、まず、家事をしてくれるかが重要で、他は後回しのようにも見える。性別というものを超えた恋愛ドラマであった。

 このように恋愛ドラマとしての新しさや高いクオリティに、のめり込んでいった女性ファンがいるのだ。彼女たちは春田の世話を焼く牧に感情移入していき、牧の恋愛を応援した。

 成熟した日本人女性は、もう古風な「ボーイミーツガール」的な恋愛ドラマに自分を投影することはできない。しかし ・・・続きを読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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