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東京医科大の女子受験生減点の衝撃

女性医師は離職率が高いから男性を採ろうという発想の問題点

和田秀樹 精神科医

東京医科大正門前で抗議活動をする人たち=2018年8月3日、東京都新宿区東京医科大正門前で抗議活動をする人たち=2018年8月3日、東京都新宿区
 贈収賄事件として世間を賑わした東京医科大学の入学試験だが、それに端を発して内部調査を行い、公表されたその報告書が衝撃を与える結果となった。

 2次試験の小論文において、女子受験生に一律2割の減点を行ったというのだ。

 もちろん、これはあってはならないことだが、私がそれ以上に衝撃を覚えたのは、医師の間で、この措置が理解できるという人が3分の2近くいたということである。

 実際、私の周囲の2人の女性医師とこの件で話をする機会があったが、2人とも仕方ないというような言い方だった。

 前回問題にしたように大学にどこまで入学者選別の裁量権を認めるかという問題のほかに、多くの医師が、女性医師のほうが将来、出産や子育てなどで、やめることが多く、あるいは当直などのない楽な仕事を選ぶことが多いので、男性医師や未婚の女性医師に負担をかけるのだから、女性医師になる人数を制限するのは致し方ないと考える医師が多いこと、しかも、女性医師までそう思っていることを痛感した。

 しかしながら、ここで見逃されている問題が二つあると私は考える。

 一つは、自分の大学病院で、戦力になるかを入学の判断基準に入れていることである。

 大学医学部というのは、言わずと知れた医師予備軍の教育機関であり、また若手医師の養成機関でもある。

 海外では、そのような認識が共有されているようで、公的な保険制度が不十分で、高額な医療費で知られるアメリカなどでは、大学病院で研修医の練習台(もちろん上の先生がきちんと指導するのだが)になることで、安価に医療を受けられるシステムが確立している。

 日本でも一般的に大学病院に入院すると主治医として処方箋などを書く「ベッド持ち」は研修医か若手医師なのだが、大学病院のほうがハイレベルな医療を受けられると信じる患者が集まる傾向にある。

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