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東京五輪まであと2年で相次ぐスポーツ界の不祥事

男子バスケの買春、水泳と陸上でドーピング違反、女子体操では暴力指導

増島みどり スポーツライター

 2020年東京五輪の開会まで「中間点」となる2年前を迎え、オリンピック関連の様々なニュース、気運を高めるイベントが24日の開会式前後に相次いで発表された。

 子どもたちが初めて選考に加わった五輪とパラリンピックのマスコット、「ミライトワ」と「ソメイティ」がデビューをし、聖火リレーは20年3月26日に福島からスタートし、121日間と異例の長い日程を取って各地を回るプランも決まった。新たに整備費の経費超過が判明したが、新国立競技場も19年11月末の完成に向けて約4割まで進んでいる様子がメディアに公開された。

 開閉会式の演出を行う野村萬斎氏が会見に臨んだメインスタジアム、聖火リレー、マスコット、閉会式と、オリンピックを支える柱が組まれ、これまではカウントダウンが先行し漠然としていた東京五輪の輪郭も、新国立競技場の工事の進行具合にも似て、少しずつ明確になっている。

 よりによってハード面の準備がこうして着々と進み、目にも見えるようになった今夏、一方で主役である選手、競技団体のソフトで不祥事が相次ぎ、2年間を盛り上げようとする機運をスポーツ界自らが盛り下げる。そんな様子だ。

 (1)世界に誇る看板にしてきたドーピングでの違反者急増

 (2)セクハラ、パワハラの指導者のハラスメント

 (3)競技団体のガバナンスの混乱

 問題は大きく3点に分けられる。それもほとんどが、直近にも他団体での問題が起きた事例があるにもかかわらず、対策や指導が練られないまま表面化に至っており、他の失敗や行状を「他山の石」として活かせないスポーツ界の危機感の欠如をも露呈する。

 アマスポーツ界にとって4年に1度のビッグイベント、アジア大会(ジャカルタ)でも20日、危機感どころか常識さえ欠く前代未聞の不祥事が起きた。

記者会見の冒頭で謝罪する、アジア大会バスケットボール男子日本代表の4選手と日本バスケットボール協会の三屋裕子会長(手前から3人目)=2018年8月20日、東京都港区記者会見の冒頭で謝罪する、アジア大会バスケットボール男子日本代表の4選手と日本バスケットボール協会の三屋裕子会長(手前から3人目)=2018年8月20日、東京都港区
 競技中の男子バスケットボール代表の4人が、選手村を出て繁華街で買春したとして、日本選手団を「追放」され帰国。日本代表としての自覚の欠如、とはわかりやすい表現だが、プロでもある4人があえて出席した謝罪会見を聞きながら、代表としてなどという以前に、社会人として、アスリートとしてごく一般的な常識、モラルさえ備えていない浅はかさに失望する。9月5日には、選手団除名とは異なる、日本バスケットボール協会理事会に第三者委員会が答申する処分があげられる。

ドーピングをうっかりミスで終わらせては悪化の一途

 東京がいわば選挙公約として掲げた「スポーツ界No.1のクリーンな国で開催するオリンピック」が大きく足元から揺らいでいる。

 19日に始まった4年に一度のアジア大会(インドネシア・ジャカルタ)では、競泳男子50メートル背泳ぎで4連覇を狙っていたリオデジャネイロ五輪代表、古賀淳也(30=第一三共)が輸入した米国製サプリメントに禁止薬物が入っていたため4年間の出場停止処分を受けた。

 これはWADA(世界アンチドーピング機構)の抜き打ち検査で判明したもので、本人は「身に覚えがない。成分も確認した上で摂取したサプリメントだった」と反論したが、たとえ故意でなくとも「汚染サプリ」(製造ラインで他成分が混入されたり、明記されない成分が入っているもの)を口にした過失は軽減されてもゼロにはならない。

 水泳では昨年も大学生のサプリメントによる違反があり、また自転車でも同じ米国製のサプリメントから検出された禁止薬物が原因で違反者が出ている。ベテランがこうしたニュースを「自分のもの」として捉えていなかった点が、問題の根深さを象徴しているのかもしれない。

 地元で開催される五輪への意欲は同時に焦りや得体のしれないプレッシャーを生んでいる。直近でもある五輪選手に、「ロッカーでライバル選手が荷物の整理をしているバッグを見たら、サプリメントのビンがいくつも入っていた」と聞いた。東京五輪という半世紀ぶりに日本スポーツ界を照らすはずの光が、皮肉にも暗部も浮き彫りにしている。

 7月には、昨年、全国実業団女子駅伝を制した「ユニバーサルエンターテインメント」でメンバーの1人だった中村萌乃(28)から筋肉増強剤の一種が検出され、同社の優勝は取り消し。中村は3月に退社していた事実も判明した。「婦人科系の治療薬に含まれていた。

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