「愛」深き社会学者の横顔
2019年07月06日
社会学者で日本のフェミニズムの第一人者、上野千鶴子が、6月30日放送の「情熱大陸」(毎日放送制作/TBS系)に登場した(2019年7月7日までMBS動画イズムで見逃し配信中)。
どちらかといえば社会を「斬る」側の学者、その中で最も大きな影響力を持つ上野が、社会と格闘するさまをテレビカメラがとらえる。それを見たいというのは、社会学者である私の欲望でもあった(これまで彼女は、こういった密着取材は断ってきたらしい)。ちなみに1998年にスタートしたこの人物ドキュメンタリー番組で学者を取り上げた例は少なく、社会学者は今回が初めてである。
放送後の反応は、女子を中心におおむね共感の声が多かった。特に、病人や高齢者のケアについて「家族のように……」が最上の褒め言葉とされる「家族の呪い」を、上野が批判したことへの共鳴が強かった。
一方で、番組の内容は表面的過ぎて、上野千鶴子のいったい何を示せたのかという批判もあった。
だが、さすがは上野。「テレビ番組とはこういうもの」という枠に収まらず、そうした文脈(予測可能性)を超えていたと、私は思う。
番組は、若い時の家族写真を映しつつ、価値観を押しつけようとする父親との間に矛盾した愛憎を抱く「父の娘」だった上野と父との関係、その父の晩年の介護、また「(父に抑圧された)母の呪い」に触れていた。
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