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政策人材育成に新たな発想を!

鈴木崇弘

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 11月5日付の朝日新聞に「政策ウオッチ 官庁エコノミスト 戦略的な育成法の構築を」という記事が掲載されている。

 同記事によれば、従来経済企画庁は、霞が関の生きた政策現場と経済理論の交差点に立てたので、多くの経済学出身者が入省した。彼らを育て、多数の官庁エコノミストを輩出してきた。私が調べたところでは、それらのエコノミストとしては、外務大臣になった大来佐武郎、一橋大学学長になった都留重人、経済企画庁長官を務めた宮崎勇、政府税制調査会長の香西泰、日本銀行副総裁を務めた岩田一政など枚挙にいとまがない。

 ところが、橋本行革による中央省庁の再編で、旧経企庁は他の官庁とともに内閣府になった。その結果、守備範囲が広がり、経済分野の専門性などが活かせない人事が増えて、経済学部出身の人材が集まらなくなり、人材流失も多くなっているという。

 それに比して、日本銀行は海外留学やその後の研究所での配置で博士号を取得させ、専門家を内部で育てるようにしている。そのため、経済学部出身者は日銀を目指しているという。

 同記事は、このような現実を受けて、「日本は通商国家だ。経済全般に精通した官庁エコノミストを育てることは、重要な国家戦略だろう。民間部門との交流を増やすだけでなく、官民が競え合える関係を築いてほしい」と締めくくっている。

 だが、そうだろうか。私は、この考えには半分賛成だか、半分反対だ。

 確かに、グローバルな視点をもち、経済全般に精通したエコノミストは、経済全体を再構築し、国際社会の中で勝ち抜いていくためには、日本に必要な人材だ。その点では、同感だ。

 だが、それは終身雇用の官僚制度の中で育てられる官庁エコノミストではない。先の記事は、まさに終身雇用に基づく従来の発想に基づくものだ。そのような従来の視点と仕組みから生まれるエコノミストでは、官僚益、省益・局益を求めかねず、部分最適はあっても全体最適の政策は創れず、日本全体のために貢献できる人材にはなれない。

 これから必要とされあるべきエコノミストは、

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