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「ニュースにだまされるな!」民主党代表選、何が起きているのか?

朝日ニュースター「ニュースにだまされるな!」×WEBRONZA提携

 朝日ニュースターの人気番組「ニュースにだまされるな!」(朝日ニュースター公式サイト)が、WEBRONZA(ウェブロンザ)スペシャルに登場。毎月第一土曜日に初回放送される2時間ちかい番組が、一挙に文字で、かつウェブで読めます。今回のテーマは「民主党代表選」(9月4日(土)放送分)。9月14日に菅直人首相の続投が決まり、17日に菅改造内閣が発足しましたが、中村さん、金子さんが迎えるスタジオに集まった4人のゲストは、この「騒動」をどのように見たのでしょうか。

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 ◆「ニュースにだまされるな!」民主党代表選、何が起きているのか?(初回放送:9月4日(土)22:00~23:55)。司会:中村うさぎ(作家)、金子勝(慶応義塾大学教授)。ゲスト:佐野眞一(ノンフィクション作家)、田崎史郎(時事通信解説委員)、大沢真理(東京大学教授)、糠塚康江(関東学院大学教授)(年齢順)。

 次回の番組は、10月2日(土)22時からの放送で、テーマは「児童虐待、不明老人……家族は崩壊していくのか?(仮)」です。ゲストは、青柳雄介氏(ジャーナリスト)、小木曽宏氏(児童養護施設・房総双葉学園施設長)、品田知美氏(東京工業大学世界文明センターフェロー)、結城康博氏(淑徳大学准教授、あいうえお順)。司会はもちろん、中村うさぎさん(作家)と金子勝さん(慶応大学教授)です。再放送:3日(日)16時00分~、6日(水)21時00分~、7日(木)14時00分~、7日(木)25時00分~。詳しくは番組ホームページへ。「ニュースにだまされるな!」番組公式サイト。

【司会】

 ■中村うさぎ(なかむら・うさぎ) 作家、エッセイスト。1958年生まれ。コピーライターやゲームライターを経て、91年にライトノベル作家としてデビュー。自らの浪費や美容整形を綴ったエッセーなどで著名に。著書に『狂人失格』『女という病』『私という病』『セックス放浪記』など。

 ■金子勝(かねこ・まさる) 慶応義塾大学経済学部教授。1952年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得修了。専門は財政学、制度経済学、地方財政論。著書に『新・反グローバリズム』、共著に『新興衰退国ニッポン』『日本再生の国家戦略を急げ』など。

【ゲスト】

 ■佐野眞一(さの・しんいち) ノンフィクション作家。1947年生まれ。出版社勤務を経てフリーに。著書に『カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」』(功は力の部分が刀)『凡宰伝』『小泉政権―非情の歳月』『鳩山一族その金脈と血脈』『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』など。2009年、講談社ノンフィクション賞受賞。

 ■田崎史郎(たざき・しろう) 時事通信解説委員。1950年生まれ。73年に時事通信社入社。政治部で田中派・竹下派・橋本派を中心に取材。2006年から解説委員長を務め、2010年7月に定年後、現職。著書に『政治家失格』『梶山静六-死に顔に笑みをたたえて』『竹下派死闘の七十日』など。

 ■大沢真理(おおさわ・まり) 東京大学社会科学研究所教授。1953年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。専門は社会政策の比較分析で、ジェンダー視点を重視。著書に『いまこそ考えたい 生活保障のしくみ』『現代日本の生活保障システム―座標とゆくえ』『男女共同参画社会をつくる』『イギリス社会政策史』、共著に『ジェンダー平等と多文化共生』など。

 ■糠塚康江(ぬかつか・やすえ) 関東学院大学法学部教授。1954年生まれ。一橋大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得(法学博士)。一橋大学法学部助手、関東学院大学専任講師・助教授を経て現職。専門は憲法学。著書に『現代代表制と民主主義』『パリテの論理―男女共同参画の技法』『もっと知りたい日本国憲法』、共著に『民主主義を考える―過去、現在そして未来へ』など。

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(冒頭テロップ)

民主代表選 激突は談合よりまし? マニフェスト変えた菅さんが悪い? 政治手法が古い小沢さんが悪い? 民意が支持する菅さんが強い? 1年生議員が頼る小沢さんが強い? 代表選後いずれは党分裂? どっちが勝っても政権は短命? こんな民主なら自民の方がまし?

♪オープニングミュージック:忌野清志郎「GOD」

うさぎ 金子さん、民主党代表選は、いよいよ小沢さん(小沢一郎元代表)と菅さん(菅直人首相)の一騎打ちですね。

金子 このくそ暑い、めっちゃくちゃな暑さの中で、「いい加減にしてくれ!」と思っている人が多いと思うんですよ。

うさぎ どちらかというと小沢さんの方がビジュアル的に暑苦しいイメージですが。

金子 残り少なくなった「悪役顔」の小沢さん、なかなか捨てがたいと思っています。叩かれるとつい応援したくなる。

うさぎ ヒール好きですか。金子さんもヒールだから(笑い)。

金子 今日なぜ代表選を取り上げたかというと、なぜ二人が対決しているのか、普通の人にはよく分からない。「なんで今さら」と。内紛に見える。小沢は外された遺恨で反撃した、という次元ではなく、今日はもう少し深く、生まれてしまった(国会の)ねじれ状況下での民主党の選択とか、二人がいろいろしゃべっている中に、どうもニュアンスが違うところがあるな、というのが少しずつ見えてきた。これをもう少し深掘りして、何が背後にあるのかをぐっと浮き立たせようと思っています。そこらの新聞とか雑誌とかテレビではちょっと見られないような、深い本当の代表選の裏側をやってみたいと思います。

うさぎ 小沢さんと菅さんの人物像も何となくイメージでとらえていますが、いったいどういう人となりなのか、語っていることの真意は何か、掘り下げてみたいと思います。

 今日のゲストはこの方々です。まずは、ノンフィクション作家の佐野眞一さんです。佐野さんは小泉元総理や鳩山一族などについて書かれ、政界を取材されています。

佐野 よろしくお願いします。

金子 (佐野さんが)人物に吸い付くと、(相手が)全部裸にされちゃう(笑い)。ノンフィクションライターとして著名で、僕はダイエーの中内功(功のつくりは刀)さんを描いた「カリスマ」文庫本の解説を書かせていただいたんですが、もうすごかった。中内功の生い立ちから全部、ほんとかよと思うほど、戦争で人肉を食った話とかすべて調べ上げて。小沢とか菅とか鳩山といった人物を、より深く背景まで遡っていただくのに一番の方じゃないかと思います。

うさぎ 私は以前、佐野さんの「東電OL事件」を読みました。今日は小沢さんと菅さんを丸裸にしていただければと。そして、時事通信解説委員・田崎史郎さんです。田崎さんには今回の小沢さん出馬の裏側などについて、いろいろと語っていただきたいです。

田崎 言葉を選びながら、慎重に(笑い)。

金子 選ばなくて結構です(笑い)。ジャーナリズムで一番取材されていて、裏事情も含めて詳しい方じゃないかと思います。

うさぎ 小沢さんをよくご存じなんですよね。

田崎 昭和57年から8~9年は、毎日会っていた時期があるんです。その後、断絶状態になりましたが、昔のことはよく知っています。

うさぎ その頃の小沢さんと今の小沢さんの違いなどもお聞きしたいです。そして、東京大学教授の大沢真理さんです。ご専門は社会政策で、以前この番組にも何回か出ていただきました。

金子 前回は子どもの貧困などがテーマでしたが、改めて長いパースペクティブでいろいろなことをやられてきて、ようやく民主党にも政策がいろいろな形で入ってきていますが、最近、税と社会保障全体のトータルな問題については、陰で暗躍している(笑い)学者の一人です。

大沢 暗躍はしていません(笑い)。

うさぎ 大沢さんは、7日発売ですが「いまこそ考えたい 生活保障のしくみ」(岩波ブックレット)という本を出すそうです。以前は「子どもは社会で育てるもの」という話を語っていただきましたが、この本にもそういうことが…。

大沢 そうですね。それと同時に、ずっとジェンダーの視点で研究していまして、ジェンダーといってもナンダーと言われますが(笑い)、男と女では事情が違うということに敏感な研究です。

うさぎ そして関東学院大学法学部教授の糠塚康江さんです。ご専門は憲法学ですが、今回の代表選が今後の日本政治に及ぼす影響などを伺いたいと思います。

糠塚 よろしくお願いします。

金子 「世界」(岩波書店)という雑誌の9月号で、この番組によく出てくる谷口尚子さん(東京工業大学)、それから三浦まりさん(上智大学)と3人で丁々発止と議論されていて、ようやく女性の法律学者や政治学者がたくさん出てきて、「いいな」と時代的に思います。女性がばんばん出てくる感じにならないと、子ども手当も男だけで議論しているとすぐ「ばらまき」とかになって、「少子化どうする」といっても何も答えられない。「僕が頑張ります」って何を頑張ればいいんだお前(笑い)、という非常に低い次元に陥ってしまう。まさにこれからは女性の時代になると思っています。

うさぎ 今回はゲストの女性と男性の比率が2対2ですね。

金子 司会を含めると3対3。どちらかというと男はみんなオヤジ化していて、女性はみんな元気です(笑い)。

うさぎ こういうメンバーで、皆さんそれぞれ専門のお得意な分野でがっつり語っていただきたいと思います。ありきたりの解説に飽きた方、不信感を持っている方、納得の2時間です。最後までごゆっくりご覧下さい。

(CM)

うさぎ 民主党代表選ですが、VTRにもあったように悪役顔の小沢さんと、何も考えていないような顔をした菅さんの一騎打ちをゲストの皆さんがどういう風に見ていらっしゃるのか。

金子 皆さんに一人ずつ、まず一言でお願いします。

田崎 代表選は党首選、民主党の代表を選ぶ選挙ですが、要は与党における選挙ですので、国家権力を争う選挙だと思っています。その視点を失うとちょっと薄っぺらになってしまう。

金子 「勝てば首相」ということですね。

佐野 田崎さんがおっしゃったとおり、まさに国家権力を争う選挙であると同時に、後で詳しくしゃべりますが、「代表選なんてやっている場合じゃないよ、いま大不況で」という言い方とは別に、僕が思い出すのは、「消えた老人」問題(非常に重大だと思うのですが)、精神科医の斎藤環流に言うと「立ちはだかる家族の壁」(「ひきこもりと所在不明高齢者―立ちはだかる家族の壁」8月29日付毎日新聞「時代の風」)の問題です。と同時に重要なテーマとして、先日、死刑場の公開がありました。つまり、国家と家族が抜き差しならない関係に入っていると思います。そういうことに対して、菅にしろ小沢にしろ、ちっともセンシティブじゃない。感性がどうしようもなく古いと思います。

金子 確かに、検察の可視化問題や死刑の問題、それから「無縁社会」(の現実)もひどい。百歳以上の行方不明者の問題もそうですね。次に何をすべきかという中に、そういうテーマが入ってこない。

佐野 「立ちはだかる国家(家族)の壁」の問題は、今日は専門家の方がいますが、今後の社会保障制度、つまり消費税を高くして北欧並みの制度を実現するのか、それとも老人や引きこもりの青年とか子どもを今まで通り、家族に丸投げしていいのか、という重大なテーマがあります。一見、「雇用、雇用、雇用」とか耳当たりはいいけれども何も言っていない。

うさぎ その点については二人とも特に何も意見がないようですね。

大沢 この機会に総理大臣になる民主党のリーダーが、自分たちの政策インデックスやマニフェスト、その背後にある政治理念をしっかり勉強して頭に入れて、自分のものにしてくれるのであれば意味がある。というのは、鳩山さんにしてもそうですし、菅さん、小沢さんにしても、歴史的な政権交代の意味や自分たちが掲げている政策の意味をどこまで自覚しているのか、たびたび首をかしげざるを得ない思いがあるからです。

金子 よく分かります。何で突然こんなこと言うのか、マニフェストから考えると理解しがたい行動がいくつもあります。

糟塚 マニフェストの関連で言えば、本来マニフェストを出したときにそのマニフェストを遂行する責任者も問われていたはずなのに、そのことを全然忘れてしまっている感じがします。そもそもマニフェスト選挙を本気でやる気があったなら、マニフェストを遂行する立法期(次の選挙までの期間)の間、同一の人物が責任者にいる、というようにシステムを変えておかなければならなかったのに、その準備がなかったために今回の選挙まで来てしまった、という印象があります。

金子 「マニフェストをやれ」という小沢さんも、給付の金額がどれだけ出せるかを競い合っているところがあります。出す金額を多くするか少なくするかはマニフェストの修正なのか。本当の意味で理念的に「子どもを社会で育てる」「少子高齢化や子どもの貧困を救え」という政策だとしても、「家族が壊れています、本来こういうことをやるべきです、やりましょう」という理念を語っていないですよね。

うさぎ 語ってないということは、そもそも理念を持っていないんでしょうか。

金子 多少は分かっているが、じゃあ子ども手当を満額を出しましょう、半額にしましょう、という議論、金額の話に終始していて、違うような気がします。(政策を)つくった若い人たちが考えていたことは、もっと理念的な社会の仕組みを根本的に変えようという話でしたから、そういう意味では(改革の動きが)弱い、というのはよく分かります。お二方の言う政策や理念が語られていない不満は非常によく分かります。

金子 今日は、いきなり社説を3連発で用意してあります。ぜんぶ朝日新聞で、朝日ニュースターなのに朝日新聞をけなすのですが、第1回の番組でも朝日新聞の社説に大きな×をつけましたね。まず8月16日付(党首選のあり方 政権交代時代にあわない)、「なぜ一政党内の手続きにすぎない投票の結果次第で首相が辞めなければならないのか」とあります。

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