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霞が関の現役官僚が明かす「事業仕分けと天下りにみる"官僚のテクニック"」

古賀茂明(前国家公務員制度改革推進本部事務局審議官)/聞き手:一色清

 国家公務員制度改革推進本部事務局などで関連法改正などを手がけた古賀茂明氏(経産省大臣官房付)へのインタビュー第2弾が実現した。9月以降も、仙谷官房長官の「恫喝発言」など国会答弁の渦中にあった霞が関きっての「改革派官僚」が、「事業仕分け」の限界や、新たな天下りを目指す「官僚のテクニック」をとことん語り尽くした。

 ■古賀茂明(こが・しげあき) 1955年生まれ。80年、東大法学部卒業。同年、通産省(現・経産省)に入省。2003年、産業再生機構執行役員。経産省の経済産業政策局経済産業政策課長などを経て、08~09年に国家公務員制度改革推進本部事務局の審議官を務めた。

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 ――前回、8月のインタビュー(9月2日付「公務員制度改革は、こうあるべきだ!」)では、公務員制度改革全般について、古賀さんの考えを伺いました。今回は、もう少し細部に分け入って、霞が関の官僚たちが制度改革を逃れるために、どのようなテクニックを駆使しているのかを中心にお聞きしたいと思います。まずはその前に、古賀さんは最近、どんなお仕事をされているのでしょうか。

 正式なポジションは、前にお会いしたときと同じ、経産省の大臣官房付のままです。

 ただ、8月当時は、夏の大異動でも何の人事発令もなかったので、「このままだと辞めるしかないのか、どうしようか」と悩んでいた状況でした。

 その後、10月に報道があったように、全国出張の最後に四国にいた際に、「参院予算委員会に出席せよ」ということで東京に呼び返されました。質問者は、みんなの党の小野次郎先生でしたが、焦点となっていた公務員の「退職管理基本方針」、主に現役出向について聞かれて、考えていることをそのままお答えしました。

 その直前に、大畠(章宏)経産相が、小野先生の「(東北・中国・四国・九州と連続した単独での)こんな出張はおかしい、いじめではないか」という質問に対して、「いやそんなつもりはない、本人の経験・能力が発揮できる形で対処したい」とおっしゃられました。世の中的には、その後の仙谷(由人)官房長官の「恫喝」発言がニュースに取り上げられて騒ぎになっていますが、私の身分との関係で言うと、直接の人事権者は大畠大臣です。ですから、私の受け止め方としては、「大臣や大臣の指示を受けた事務方がいろいろ考えているだろうから、それがどうなるか待っていなくてはならない」と考えました。

「待っている」という意味ではこれまでと同じですが、それ以前は何の見通しもない状況だったのが、今回は大臣がおっしゃっているわけで、事務方が何か考えるだろう、という希望が出て来ました。これが8月と11月で変化した点ですね。

 ――つまり、古賀さんの「経験や能力が活かせる形」の異動がそれほど遠くないうちにあるのではないか、ということですか。

 そういう可能性が出てきた、というふうに認識して待っていますが、(通常の異動からずれた)時期も時期だし、なかなか難しいのでしょうね。それに、大臣の意向だけで動くほど官僚は単純ではありません。官邸の意向等も考えているのだと思います。あれから1カ月過ぎましたが、今のところ前向きな動きはない状況です。「本当にまた仕事ができるのか」という不安な思いが再びしてきています。

 昨年も、公務員制度改革推進本部事務局から経産省に戻ってきた当初は、いかにも近々異動がありそうな感じだったのに、待てど暮らせど何もない。そのまま今年の夏まで来てしまったわけです。そういう意味では、その時と似てきました。最近は、「また職探しを始めようか」という感じで、元に戻った面があるのかもしれません。

 ただ、まだご発言そのものは直接見ていないのですが、11月16日の大臣会見で、どなたかから「(古賀さんの扱いは)1カ月たってどうなったのか」という質問が出たそうです。大畠大臣は「そんなに簡単ではないけれど、いろいろ考えている」という、10月と同じようなお答えだったそうです。「もう少し待つことになるのかな」とも感じています。

 ――経産省が古賀さんを使う気があれば、古賀さんは「まだ官僚を続けたい」という心境ですか?

 もちろん基本的にはそうです。辞めるためにいろいろ発言しているわけではないので……(笑い)。

 ――なるほど、分かりました。さて今回は、官僚のテクニックを含めてお話いただこうと思います。民主党政権はなかなか霞が関の官僚を使いこなすことができずにいて、いろいろ官僚のいいようにされる形で政治や行政が動いています。10~11月に第3弾がおこなわれた事業仕分けも、「再仕分け」が必要になるほど、霞が関改革がほとんど前に進んでいない状況です。なぜこうなってしまっているのでしょうか。ここからは、ほとんど古賀さんにレクチャーを受ける形になると思いますが(笑い)、よろしくお願いします。

 最近も話題になっている事業仕分けについて、いくつか気づいたことがあります。

 一つは、官僚のレトリック以前に、「仕分けの仕組みがどういうものなのか」という点です。

 仕分けについていろいろ議論されるなかで、「実は、仕分けの仕組みそのものに問題があるのではないか」という理解がようやく深まってきていると思いますが、結局、何の法律的根拠もない事実上の組織が仕分けをやっています。例えば、経済財政諮問会議は法的根拠がありますし、普通の政権ではっきりした方針を打ち出す時は、法律や政令・省令などの形で定型化したり、閣議決定という形を取ったりします。

 しかし、今の仕分けを見ていると、そもそも仕分けの会議自体どういう根拠に基づいていて、どういう権限をもってやっているか、よく分からない。仕分け人の位置づけも不明です。

 他方で、予算をつくる際には、各省庁が予算案をつくって概算要求するという法令上きちんと認められた権限があります。ですから、法令に定められた権限に基づいて要求をする。その概算要求を査定する権限は、財務省に法律上はっきりとあります。手続き的には、各省の要求を財務省が査定して、それが合意されれば、最終的に予算案として閣議決定されて国会に出ていきます。ところが、昨年から、その手続きの過程の途中に、事業仕分けが事実上入ることになっています。

 しかし、仕分けで議論して「廃止」や「縮小」などと決定しても、その意味がなんなのか、それが全然わからない。11月15日から仕分け第3弾の後半戦が行われている最中にも、各省の副大臣や政務官、元大臣など民主党の政治家の多くが、仕分けの仕組みそのものに文句を言っていました。仕分けの仕組みそのものに対する信頼性が疑われる状況になっています。

 仙谷官房長官が「仕分けの結果を尊重するように」と言ったという話も聞きましたが、それも「官房長官が発言した」というだけのことですので、最低限、「閣議でルールをつくる」といったことをしないと、たぶん(政治家も役人も)誰も言うことを聞かないのではないでしょうか。

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