菅沼栄一郎
2011年02月03日
名古屋市や阿久根市で、市長と議会の対立がリコール・解散合戦の泥仕合となっていることをきっかけに、二元代表制が機能不全となっているのではないか、との議論がある。
そうだろうか。
国の議院内閣制を地方にも導入しようと訴えている地方議員のグループがある、と聞いて、東京都内で開かれたシンポジウムを聞きに行った。
「地方議院内閣制」は、首長を事実上廃止して、議員が内閣を組織。このなかからリーダー=議長=首長を選出する、という「議会一元制」ともいうべきものだ。ただし、首長は選挙で選ぶとした憲法93条に違反する疑いがあるため、首長を残して儀礼上の仕事に限定する、という提案だ。
「ずいぶんムシのいい考えだな」。シンポの議論を会場の隅で聞きながら、そう思った。
地域の住民から聞かれる批判は、議会無用論が圧倒的に多い。自治体財政が苦しさを増す中で、議員定数や報酬削減を求める住民の声は強まるばかりだ。そんな住民に対する信頼回復の努力を置き去りにして、いっぺんに、議会に権限を集中する制度変更を唱えても、とても賛同は得られまい。会場からも、「まずは今の制度の中で改革の努力をするのが先だろう」「首長を直接選ぶ二元制の方が市民に近い制度では」などの疑問の声が少なからずあがった。まず議会の改革が先だというのだ。
ただ、将来的には二元代表制だけにこだわる理由もないだろう。
橋下徹・大阪府知事が提案する「議会内閣制」も検討に値すると思う。これは、首長が議員を部長などに採用し、協力して行政執行にあたろうというものだ。「言うことを聞かない議会を取り込もうとしているだけ」と、議会のなかには反発もあるが、そのミソは、議会を予算編成に引っ張り込むことにある。前段で言及した「地方議院内閣制」も、議会が予算編成に深く関わることにその本質的な狙いがある。
埼玉県志木市の穂坂邦夫・元市長は03年に、「予算案のたたき台を作って欲しい」と議会にもちかけたことがある。
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