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新議員会館を若手アーティストの発信の場にする

鈴木崇弘

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 政治はいまだ今後の見通しが明確に見えてこない状況。混沌としている。そんな中、前向きで明るい話題・可能性を提供してみたい。

 かなり以前に議員会館についての記事(2010年8月12日付「有権者に問う!新議員会館は本当に「ゼイタク」?」)を書いた。その際に、新議員会館には「無駄な造りもある感じだ」と述べた。そこで提案がある。

 現在の議員会館は、各階のフロアには何もなく、殺風景。また1階のロビーは広々として良いが、折角の空間が活かされておらず、何となく無駄な感じを与えている。この空間を活かす提案である。

 日本の文化やソフトパワーが優れていることはよくいわれる。海外でも評価されている。他方、日本で芸術系の学校(大学や専門学校など)を卒業し創造性をもっている可能性のある人材も毎年3万人ぐらいいるそうだ。しかし、そうした才能や身に付けた知見を活かせる職につけるのは、そのうちの1割に過ぎず、彼らの才能や技術が活かされているとはいえない。それは、日本におけるアートや芸術の市場が十分でなく、彼らが社会的に活かされる仕組みが脆弱だからだ。

 ならば、彼らの作品を議員会館の各階の廊下、ロビーなどの壁面に無料で展示できるようにしてはどうだろうか。

 筆者は、美大学生やアーティストの卵と話す機会がしばしばある。彼らのアートに対する思いと努力は並々ならぬものがある。しかし、彼らが自腹で自分の個展を開いても、それを見に訪れる人は親戚や知人・友人のみというのが現実だ。彼らが自分の作品や努力を多くの人に見てもらいたくとも、それが叶わないのが現実だ。また、彼らがどんなに優れたアート作品を制作しても、それを見て、評価してくれる人がいない限り、それらの作品は世に出ることはない。まして、作品として売れることもない。つまり、彼らがアーティストして活動を続けていくことはできない。一方で、著名なアーティストの展覧会は長蛇の列となり、作品もまともに見られないような混雑となる。

 この意味からも、若手のアーティストが自分の作品を、議員会館に展示できることの意味は大きい。なにしろ議員会館は、日本全国から人が集まるポータルサイト、ハブのような施設である。海外からも多くの人が訪れる。そこでは、展示された彼らの作品が多くの方々の目に触れる。また、それらの作品をみることで、議員や訪問客が新たなるインスピレーションを得られるかもしれないし、アートへの関心をはぐくむことができるかもしれない。また、実際に購入されるチャンスに恵まれる作品もあるだろう。それは、アートの市場を拡大することになるし、社会への新しい発信になる。政治や政策の新たなるイメージ構築にもなる。

 さらに、新議員会館の1階ロビーのスペースを活用して、年に数回会館内に展示したアートのオークションをしてはどうだろうか。

 これらのアート展示やオークションのイベントで参考になるのは、三菱商事が社会貢献事業として実施している「三菱商事アート・ゲートプログラム(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/contribution/culture_art/activities01/http://www.mcagp.com/)」だ。このプログラムは、将来性あるアーティストの現代アート作品を公募して年間約200点を1点10万円で購入。その作品を社内外に展示した後(注1)、一般参加のオークションで販売している。それによって、若手アーティストの育成とキャリア支援を目指すとともに、一般の方々のアート作品購入の間口を広げ、アート市場の拡大にも貢献しようというものだ。また、オークション落札金額の一部は、美術界を目指す人々への奨学金として活かされる仕組みになっている。多くの若手のアーティストが、これらの過去の展示とオークションを通じて、個展の機会を得たり、コレクターから新規の制作の依頼を受けたりしているという。

 もともと政治や政策は、社会をクリエートする営みであり、社会に希望を与える活動だ。政治はある意味、アートなのだ。 ・・・続きを読む
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筆者

鈴木崇弘

鈴木崇弘(すずき・たかひろ) 城西国際大学客員教授(政治学)

城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授。1954年生まれ。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団の設立に関わり、同財団研究事業部長、大阪大学特任教授、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の設立に関わり、同機関理事・事務局長などを経て現職。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する――自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』『僕らの社会のつくり方――10代から見る憲法』など。

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