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出遅れた自衛隊の無人機(下)――漫然と開発を続けるのか?

清谷信一

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 意外に知られていないが、我が国では民間では2000機以上のUAV(無人航空機)が農薬散布や送電線の管理、火山の観察、航空写真撮影などの用途で使われている。にもかかわらず、防衛省・自衛隊では無人機の導入や運用が、諸外国の軍隊に比べて遅れていることを前回述べた。

 まず前回紹介できなかった防衛省技術研究本部(技本)のUGV(Unmanned Ground Vehicle無人陸上機)について、説明しよう。

iロボット社のパックボット=筆者提供
 技本では平成16年度からiロボット社のパックボットに似たマンポータブルなUGVを開発しているが、未だに実用化はされていない。しかも「携帯型ロボット」とされているが、2007年の技本の発表会で公開された時点で重量は36キロほどあり、10.89キロのパックボットの3倍だ。パックボットは兵士が背中に背負って運用することも可能だが、36キロではそのような「携行」は無理だ。ちなみに実際の開発は日立が担当している。

 技本ではこれを小型化するとしていたが、その後何の発表もされていない。無論、陸自が採用したわけでもない。対してパックボットは2002年から米陸軍に採用され、アフガニスタンの戦場に投入されている。そして戦訓を取り入れて多くの改良がなされており、より使いやすくなっている。つまり少なくとも米軍に10年ほどの遅れを取っていることになる。

 何故自衛隊のロボット導入が遅れているのか。それにはいくつかの理由がある。

 まず、第一に諸外国の数倍は当たり前という高コストな調達をしているために、無人機やロボットのような「新装備」に導入する予算が回ってこない。また、調達の優先順位をつけられない。任務に必要な装備よりも、身内の組織や天下り先に配慮した装備調達を行っている。日本本土に対する師団規模の上陸作戦がおこなわれるような可能性は殆どない。

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