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深刻化する中東の人権侵害(上)

土井香苗

土井香苗 国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表

 4月29日(金)、国連の人権理事会(在ジュネーブ)で、日本を含む16カ国の呼びかけにより、シリアの人権状況に関する「特別会期」が開催された。この特別会期では、圧倒的多数によりシリア政府を非難する決議が採択され、平和的なデモに対する政府の暴力を非難するとともに殺人などの人権侵害に対する国連人権高等弁務官による迅速な調査を求めた。国連人権理事会での特別会期の開催には、47カ国からなる理事国のうち1/3以上の求めが必要とされており、日本が、米国や韓国、メキシコ、セネガル、ザンビアなどの他の15理事国とともに、この特別会期の開催を呼びかける動きに加わったことは評価できる。

シリア中部のホムスで4月18日、街中心部の広場に集まった民衆=ロイター
 シリアでは、3月半ばから政府に対する抗議デモが始まった。これに対し、治安・諜報機関が全国で、殺害、恣意的な逮捕・拘禁、拷問や虐待で応えており、地元の人権団体によると、4月末時点までに、デモ参加者や通行人など約450名が殺害されている。

 悪名高いシリアの秘密警察「ムハバラート」は、抗議デモに支持を表明した弁護士や活動家、ジャーナリストなども拘束している。アサド大統領は1963年以来発令されたままの緊急事態令(治安機関による令状なしの拘束や、外部から隔絶した長期拘禁など、市民の自由を制限してきた)を撤廃する大統領令を発令したものの、その翌日の4月22日(金)には、シリア全土14都市で行われた抗議デモに軍が実弾を発砲するなどし、少なくとも76名が殺害(少なくとも112名以上の可能性もある)される事態となった。

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