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G8ドービル・サミットと日本の発信力

林志行

林志行 林志行(早稲田大学大学院経営デザイン専攻教授)

 フランス・ドービルで開かれた主要国首脳会議(G8)で、主役だったはずの日本(菅総理)はスルー(無視)されて終わってしまった。

 気になったのは、菅総理の表情。やけに笑顔で接していたが、これも側近のアドバイスなのだろう。暗い日本より、明るい未来をイメージさせるためか。それはそれで良いが、未来志向のメッセージは出せたのか。いつもの癖(?)で、腰に手を当てるシーンが多く見られ、ストライドの大きい各国首脳に遅れまいと、足早になる姿が印象的であった。

フランス・ドービルのG8サミットで各国首脳と共に記念撮影する菅直人首相(中列右端)=5月27日、代表撮影
 今回のサミットは、原発推進のフランスでの開催であり、原発をやめる話はタブーであったため、日本としては、予定調和の大人の対応をしたのであろう。

 地震大国の安全基準を強化し、先進国での原子力発電は引き続き、それぞれの判断で続けようという話に落ち着いた。

 EUは、フランスとドイツが二つのエンジンとしてけん引するが、原発政策の立ち位置は異なる。日本での原発事故をきっかけに、ドイツは脱原発に舵を切り、EU加盟国ではないものの、スイスも稼働中の5基の原発について、稼働開始から50年をめどに順次廃炉にするとしている。フランスは、原発大国であり、いまさらやめるわけにはいかない。

 そうしたなか、国内問題(原発の制御、安定化)を解決できていない日本が、世界に向け、どう原発やエネルギー政策に独自のメッセージを出すのか。出せるのか。それが、命題だったはずだ。

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