石丸次郎
2011年07月26日
金正日政権は、この「軍隊の飢え」に相当な危機感を持っていると思われ、2011年1月頃から、なりふり構わず国民から「軍糧米」を徴発している。
もう10年以上も続いていることだが、最初に徴発のターゲットになったのは農村であった。
北朝鮮では、今も協同農場を基本とする集団農業をやっている。
協同農場では、一定の土地を50~100世帯が一つの作業班となって耕作する。栽培するのは稲、トウモロコシ、ジャガイモ、豆、麦などが多く、農場ごとに計画(ノルマ)を立てて栽培し、収穫後に国家に一定の割合を納付、残りが農民に現物と現金で「分配」される仕組みだ。
計画に責任を持つのは各作業班の下にある分組で、達成されない場合は「分配」が減らされる。
種子や肥料、農薬、ビニールなど営農資材は、本来は農場として(つまり国の責任で)準備することになっていたのだが、現在では「自力更生」の名のもと、農民自身がそのほとんどを出さなければならなくなっている。
このため収穫後の「分配」は、多くの農場でほとんど農民の手に残らないというのが現状だ。
問題は、なけなしの「分配」や、自留地(自由に生産物を処分することが許された庭先の土地)の収穫から、さらに「軍糧米」「首都米」(平壌市民への配給や首都整備費用だという)が徴収されていくことだ。
これは集団農業本来の規定以上の量を収めさせられているわけで、国家による収奪以外の何ものでもない。
以下は、2010年夏に、公務で中国を訪れた労働党の地方の中堅幹部へのインタビューである。
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