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政治家は私塾で育成できるのか?

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 野田佳彦氏が、新しい総理大臣に就任した。野田氏は、政治家育成で有名な松下政経塾が生んだ初めての総理であるため、松下政経塾がにわかに注目を浴びている。 

 このような政治などのリーダーを育成する学校は、一般的とはいえないが、松下政経塾をはじめとしていくつか存在する。また大学にも多くの政策系の学部や大学院などがある。

 本稿では、松下政経塾など、民間で私塾的に政治家などのリーダーを育成する組織を比較検討し、「政治家は果たして育成できるか」という問題を考えてみたい。

「松下政経塾出身」の肩書をアピールする総選挙の立候補予定者=兵庫県明石市

 松下政経塾は、松下電器産業の創業者の松下幸之助氏が、日本の危機的状況を予見し、難局を打開するためには、「新しい国家経営を推進していく指導者育成が、なんとしても必要である」との思いから、私財70億円を投じて、1979年に設立した人材育成機関である。同塾の塾生は、厳しいセレクションプロセスで選考される。そして全寮制の環境のもと、金銭的な支援も受けて、非常に恵まれた環境で、政治や経済等の分野で国家的指導者となるためにフルタイムでの研修を受ける。

 その研修は、合宿や100キロ行軍などを含む「心身鍛錬、人間観探究、基本理念探究、素志確立(修身)」および「国家ビジョン探究、専門分野探究、素志研修(立志)」から「基礎課程」の前半2年間、さらに「現地現場実践、海外研修(実践)」および「長期的取組ビジョン確立、後輩指導、進路開拓(開拓)」の後半2年、計4年間の継続と積み上げにより、人間と志を磨き続けて、自らの進路を開拓していくことを目的としている。

 塾生は、以前は大学などの新卒者が主に選ばれてきた。だが、

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