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FX(次期戦闘機)機種決定は、政権の命取りにならないか?

谷田邦一 ジャーナリスト、シンクタンク研究員

 6年に及んだ熱い空中戦は、米ロッキード・マーチン社のステルス戦闘機F35の勝利に終わった。数々の問題を指摘されながらも世界最高水準の第5世代機に決まったことで、同機を強く推してきた航空自衛隊のパイロット集団の主流は、現役、OBともに、喜びと満足感にひたっていることだろう。

 しかし、防衛省内の下馬評通りの結果とはいえ、どうもすっきりしない後味の悪さが残る。大手新聞各社は決定前から社説を掲げ、「欠陥問題を見極め選定を」(産経)、「未完成F35で大丈夫か」(東京)、「選定理由を明確にせよ」(朝日)などと異例の警鐘を鳴らしてきたところである。

 この選択で本当によかったのか。F35はカタログ上の性能しかわからない上に、たくさんの不確実性を抱えている。日本の航空機産業が存続の危機にあり、世界の戦闘機開発の潮流が大きく変わりつつある節目にあって、民主党の野田政権は一種の「賭け」に出たのではないかとさえ映る。選択が誤っていたとすれば、しわ寄せはただちに私たち納税者への負担となってのしかかる。それだけに、今回の決定を混迷の始まりととらえる業界関係者や専門家たちも少なくない。

 戦闘機と旅客機との違いは、よくレーシングカーと乗用車との違いにたとえられる。カネに糸目をつけず、安全性を犠牲にしてでも、ひたすら性能の高さを追求するのが戦闘機の特徴だ。その目的が国家の防衛であることを考えると、ある程度はやむを得ない面もあるだろう。安くてすぐに手に入る車であってもレースに勝てなければ困るが、チームを破産させるほどカネがかかったり、レースに間に合わないような車を発注したりすることも許されないのは言うまでもない。

 国内の航空関係者の間からは、今回の選択は、それほど常識を超えたものという見方が出ている。

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