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 西日本において稼働中の原発がなくなり、「原発ゼロ」が出現した。なーんだ、できるではないのか、というのが率直な感想だ。そもそも福島第一原発事故の原因究明も不十分なままに、原発を立地する自治体の首長に「再稼働を認めてくれ」と要求しても、なかなか同意を得られないのは当然のことだろう。原発依存の社会から脱却、卒業したいというのが多くの国民の思いだろう。枝野経産相はこの夏の電力見通し、さらには中長期的なエネルギー転換の見取図を早く示してもらいたい。

 まず昨年3月以降の欧州の動きのうち、参考になりそうな出来事を見ておこう。

 原発の安全性についての再評価、ストレステストは欧州各国でも行われている。各国での審査を終え、年明けから各国間の相互審査(ピュアレビュー)に入りつつある。

 各国審査で注目されたのが、1月に発表されたフランス原子力安全機関(ASN)の報告だ。現在58基ある原発を即時停止する必要はないとしながらも、その継続運転のためには、地震や洪水、使用済み燃料の貯蔵プールでの燃料露出などへの予防策の強化を要求。事故発生時の特殊チームの派遣、資材の運搬など「原子力即応部隊」の創設も求めた。そのためには巨額の投資が必要となるのは明らかだ。

 フランス大統領選挙では、原発推進の現職サルコジ大統領に対して、野党社会党のオランド候補は、2025年までに原発の依存度を今の75%から50%に減らすと主張している。原発が大統領選で論争になるのは、フランスでは初めてのことだ。

 原発に絡む深刻な事故という場合、欧州ではテロ攻撃や飛行機の墜落なども想定している。ドイツ政府は福島第一原発の事故後、原子炉安全委員会(RSK)に原発17基の安全性の再点検を求めたところ、委員会は原発が総じて「高度な頑健性を有している」としつつも、最高の安全評価の「3」を与えた発電所はなかった。飛行機の墜落に対する耐久性はないと判断されたのが一因だ。

 欧州でさえこれだけ厳しい安全性評価をしているのに比べて、日本の安全性評価がどれだけ厳密、公平になされているのか、という疑問はやはり消えない。学校の試験問題のように「○」か「×」かが問題になっているようで、耐震性や津波対策でどれだけの改善策がなされ、さらに何が必要かといった論議が聞こえてこない。

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 中長期のエネルギー政策転換という点で、やはり、先を行くのはドイツだろう。

 1998年の総選挙で政権を取った社会民主党と緑の党は、電力業界との2年余りの交渉の末に合意に達し、 ・・・続きを読む
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筆者

脇阪紀行

脇阪紀行(わきさか・のりゆき) 大阪大学未来共生プログラム特任教授(メディア論、EU、未来共生学)

1954年生まれ。79年に朝日新聞社に入社、松山支局などを経て大阪本社経済部に。90年からバンコクのアジア総局に駐在。米国ワシントンでの研修を経て97年からアジア担当論説委員。2001年からブリュッセル支局長。06年から論説委員(東南アジア、欧州など担当)。2013年8月末に退社、9月から、大阪大学未来共生イノベーター博士課程プログラム特任教授。著書に『大欧州の時代――ブリュッセルからの報告」(岩波新書)、『欧州のエネルギーシフト』(岩波新書)。

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