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次の選挙後に浮上する「根本的な選挙制度論議」

櫻田淳

櫻田淳 東洋学園大学教授

 「時事通信」最新世論調査(五月十~十三日実施)によれば、野田佳彦内閣の内閣支持率は、二三・六パーセントを付けた。民主党の支持率は、二〇〇九年八月の「政権交代」以来、最低の九・〇パーセントに下落している。筆者は、「政権交代」以降の民主党内閣の最たる課題は、「政権担当能力」の証明であり、それを通じて「次の執政への芽」を残すことにあると説いてきた。しかし、民主党内閣三代の執政は、その課題を片付けるに至らなかった事情を暗示している。

 衆議院議員の任期満了まで既に一年数ヵ月を残す現在、次の衆議院解散・総選挙までの刻限も、着々と近づいている。次の衆議院選挙は、現状のままでは、「一票の格差」に絡む違憲状態の下で実施されることになる。特に現在のように、「ねじれ国会」状況が続く中では、この違憲状態を当座のものとして避けるためには、「〇増五減」案として自民党が提案しているような小幅な議席の増減によって対応するしかないであろう。

 だとすれば、次の衆議院選挙後に登場する内閣にとって、最初に取り組むべき課題の一つが、現行選挙制度の検証と修正なのであろう。

 ただし、選挙制度それ自体には、「完全な体裁」は期待し得ない。一九九四年以前、中選挙区制の弊害が説かれたのは、それが往時の自民党による一党優位体制を担保するものであったからである。この一党優位体制の下、自民党における派閥抗争と腐敗は折に触れて批判に晒された。

 小選挙区主体の選挙制度を導入したことの成果である「政権交代」以降では、政治に対する不満は、「統治能力」の減退に移っている。選挙制度に絡む議論には、それぞれの時代における政治への不満が反映されやすいけれども、次の衆議院議員選挙後には、以下の二点に留意した議論が要請されよう。

 第一に、衆議院における小選挙区主体の現行選挙制度の意味は、適切に検証される必要がある。これは、現行制度の基調を維持した上で、小選挙区の区割の如何や比例代表区分の増減に関する議論の域に止まるものではない。それは、「小選挙区比例代表並立制という選挙制度が日本の社会土壌に果たして適合するか」という根本に立ち返った検証と議論でなければなるまい。

 そもそも、野田佳彦(内閣総理大臣)や前原誠司(民主党政調会長)を初めとして、現在の日本政治の中核を担うのは、既に「一九九四年以後の世代」の政治家になっている。一九九四年以前、中選挙区制の選挙制度とそれを前提にした派閥の枠組は、自民党政治家にとっては、「養成と鍛錬」の場であったけれども、現行選挙制度は、政治家の「養成と鍛錬」に際して、どのような意義を持ったのか。

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