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OneVoiceサミット ネット選挙運動解禁へ、超党派で夏までに法案 各党の参加者一致

政策男子部、OneVoice

 今春発足した政策男子部。今回のコラムは、インターネット選挙運動の解禁を求める「One Voice Campaign」に関わる原田謙介氏が担当します。原田氏は若者の投票率向上に尽力する学生団体ivote前代表。若い世代と政治の関係を常に念頭においた活動を積極的に続けています。

 「ネット選挙運動解禁で何が変わるの?」と言う声も少なくありませんが、これが実現することで有権者と政治家が互いをより意識し尊重するようになり、政策形成過程がより有権者に開かれたものへと変わっていく可能性が広がるかもしれません。21世紀に入って10年余り。インターネットというツールが生活の一部になったいま、有権者と政治の望ましい関係を模索する取り組みを政策男子部としても盛り上げていきます。

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5月23日、One Voice サミットを議員会館で開催

 2012年5月23日夕刻、東京・永田町。日本の国政のど真ん中、国会議事堂に隣接する衆議院第一議員会館の多目的ホールは、200人を超える聴衆で満席。テレビやネットの中継カメラも複数入り、熱気に包まれました。ネット選挙運動解禁を求めるNPO、「OneVoice」が企画した「OneVoiceサミット」の会場です。

 「サミット」に集まった面々は、

遠山清彦・公明党衆議院議員、

松田公太・みんなの党参議院議員、

世耕弘成・自民党参議院議員、

石井登志郎・民主党衆議院議員、

福島瑞穂・社民党参議院議員、

井上哲士・共産党参議院議員、

鈴木寛・民主党参院議員(登壇順)、

の各党の国会議員の方たち。

モデレーターとしてメディア・アクティビストの津田大介氏、そして、主催者側の代表として私(原田)が参加しました。

 サミットの目玉は、「ネット選挙運動解禁に向けてできること」をテーマとするパネルディスカッション。参加の各議員は以前からネット選挙運動の解禁に向け法案を準備、2010年に法案が成立直前に頓挫した経緯を踏まえ、それを惜しむ意見が続きます。もう1度ネット選挙運動を解禁する法案を通過させ、次の国政選挙では実現させたいとの認識をほぼ共有する中で議論が進みました。

サミットに参加した国会議員の面々

 遠山氏は、「前回の法案で各党が合意しているところまでは異論はありませんと各党に確認し、与党内で合意し、一票の格差等の問題と切り離してやりますと、与党から野党によびかけてくれればすぐに進む」と提案。これに対し、津田氏が「なぜ野党時代はネット選挙運動解禁を訴えていた民主党が与党なった途端に進まなくなるのか?」と疑問を提起すると、鈴木氏は「国対(=国会対策委員会)同士だとうまくいかない。切り離しをきちんとするとの各党の合意があれば進めることができる」と応じました。

 また、石井氏は「積極的に反対するのは、自分に対するネットの書き込みを見て塞ぎ込むような人だ。皆さんにお願いしたいのは、ネットでも前向きなエネルギーを伝えてほしい」と述べました。鈴木氏はさらに、解禁のための方法として「マスメディアを中心に、このネット選挙運動解禁を盛り上げ、国会内で審議するプライオリティを上げる必要がある」と発言。福島氏は「全会一致で前回国会にだした部分までを前提として進めた方がよい」、井上氏は「2010年以降超党派で集まったこともなく、優先順位が下がっている。世論の波が欲しい」。松田氏は「前回の合意のラインは低すぎる」と述べるなど、活発な意見が交錯しました。

 パネルディスカッション論点の一つ目として津田氏は、「いったいネット選挙運動の解禁に誰が反対しているのか?」という疑問を議員の方々に投げかけました。

津田大介氏(左)と筆者(原田)

 これに対し、世耕氏は「誹謗中傷やデジタルデバイド」が反対理由としてよく挙げられると説明しながら、「カメラの前で言えるような反対ではない。なんとなくつぶされていく。なんとなく進まない。だからみなさんにそのなんとなくを暴きだしてほしい」と訴えました。

 今後の取り組みについては、世耕氏は「各党協議会のようなものを立ち上げることから始めたい」と提案。遠山氏も「大賛成だ」と同意しました。その後、井上氏「再度超党派で動き始めたい」。福島氏「党一丸で取り組んでいきたい。超党派・実務者で進めていきたい」と続き、松田氏も「何月何日までに法案を出すか決めよう」と積極的な姿勢を参加者が鮮明にしました。与党民主党の石井氏は、「暑い夏までには法案を出したい。背水の陣で臨む」と応えました。

「各党協議会のようなものをたちあげる」との各党の合意がとれたことが最大の成果だったと思います。私自身も、これらの各議員の発言をうけて、「夏までにもう1度イベントを開きたい。進捗状況をそれまでにもみせるようにしたい」と発言しました。

また、ネット中継での視聴者も2万人を超え、この問題に関する世論の注目度の高さをみせることが出来たと思います。

インターネット選挙運動解禁を求めるOne Voice Campaign

 “一人一人の小さな声も、共感の輪でつながり

一つの世論となることで、政治を変えていく。“

 これは「サミット」を企画したOne Voice Campaignのホームページに載っている言葉です。今、私達有権者一人一人の声は社会に伝わっていない“No Voice”の状態だと思います。でも本当は一人一人の声によって社会を作っていくことが大事です。“No Voice”から“One Voice”へ。これがOne Voice Campaignの目指すところです。その第一歩として、「インターネット選挙運動の解禁」を求めた活動を行なっています。ホームページは2012年5月8日に開設しました。

インターネット選挙運動解禁へ意欲を見せる国会議員ら

 One Voice Campaignは様々な分野で働く社会人・フリーランス・学生等により構成される“集合体”です。私自身も発起人の一人として最初から関わっています。活動は、政治情報サイト「ザ選挙」を運営している高橋茂氏と2010年参議院選挙の際にTwitter模擬選挙をおこなった「GoodNetVoting」代表の佐別当隆志氏の二人からほぼ同時に、「ネット選挙運動解禁にむけてなにかやろう」という話をいただき、私も元々問題意識のあった分野なので、全部まとめてやってしまおうということで始まりました。

 そこに編集者の江口晋太郎、コンテキストデザイナーの高木新平、ブロガーの西村顕一、学生メンバー等多くのメンバーが集い、4月頭に活動が始まりました。主にFaceBookのグループでやり取りをしておりグループには現在80名近くが入っています。“団体”ではなく“集合体”としての活動形態をとっており、大きな方向性のもとに各メンバーが自分の特性・興味関心のもとに様々なことを行なっています。

 公式ホームページの立ち上げと同時に5月8日に公開したFaceBookページには、8時間で1000「いいね!」が集まり、現在は6000近くに達しています。HP内にはジャーナリストの田原総一朗氏・ライフネット生命保険株式会社の岩瀬大輔氏等多くの著名人からの賛同メッセージが掲載されており、ネット選挙運動解禁の必要性を閲覧者に訴えています。

なぜインターネット選挙運動が禁止されているのか

 ここでそもそも“ネット選挙運動”とは何かということについて改めて説明させてください。

 一言でいうと、選挙期間中の選挙活動において、候補者・有権者がインターネットを使うことです。たとえば、候補者がブログを更新したり、演説動画をYouTubeで共有したり、有権者が応援している候補者の応援サイトを作成したり、候補者と有権者がTwitterでインタラクティブなコミュニケーションをしたりということです。

 そして、現在は公職選挙法によってこれらのことが全て禁止されています。とはいっても公職選挙法の条文に“インターネット選挙運動を禁じる”とかかれているわけではなく、昭和25年に書かれた法律を、インターネット選挙運動を禁じるように解釈しているだけです。詳しく書くことはやめておきますが、インターネットでの選挙運動について議論された結果として法律が出来上がったというわけではないのです。

 上記の「サミット」でも、こうした点を理解するために、「ザ選挙」の高橋氏が、1996年から今日までのインターネット選挙運動解禁をめぐる曲折などについて説明しました。2010年の参院選前に与野党合意まで至ったものの結局成立せずにそのまま、現在も進展がないことや、選挙公報を各自治体のホームページに掲載することが今年許可されたことなども紹介されました。また、選挙プランナーの三浦博史氏からは、海外のネット選挙運動に関しての報告があり、「日本のように全てを禁止しているのは共産圏の国ぐらいだ」との指摘がありました。

満員の会場では議論に熱心に耳を傾ける姿が目立った

改めてネット選挙運動解禁を求めます

 インターネットの人口普及率は現在、78.2%で、年々普及率は増加しています(平成23年情報白書より)。この数字はインターネットが生活の中で、もはや欠かすことのできないインフラの一つとなっていることを示しています。しかしながら、このインフラが、政治を司る政治家を選ぶ選挙という重要な場において、使えなくなるということはおかしいことです。

 投票の際には、多くの情報をもとに、政策への賛否やどの候補者へ投票するかなどを決めます。しかし、情報収集をしようにもインターネット上の情報が規制されているのが現状です。

 有権者は候補者に質問をし、意見をぶつけることが必要です。しかしながら現在は街頭にいる候補者に対して行うことはできても、Twitter等を通して行うことはできません。

 候補者は自分の政策・主張等を多くの人に伝えようとしてもインターネットが使えないので、旧来からの選挙運動通りの街頭演説・ビラ配りといった対象・時間が限られた方法でしか広報することができません。

 政治家には、常日頃の政治活動の状況をできるだけ有権者に分かりやすく伝えることも求められているはずです。任期中にはインターネットを使って積極的に情報発信をしていた政治家が、選挙期間になると、そのインターネットが使えなくなるという状況。これはやはりおかしいと思いませんか。

 ネット選挙運動が禁止されていることがおかしなことである例を上げましたが、一言でいえば、「今のメディア環境で当たり前のことを当たり前にする」。ここに尽きると思います。当たり前ではない現状の選挙をさっさと終わりにして、時代に即した、多くの人が関心を持ち、議論を行い、判断をし、投票するという状況に近づけるためのツールの1つとして、インターネットを有効活用していきたい。私たちは強くそう思います。

今後のOne Voice Campaign

 5月23日の「サミット」終了後、5月27日23時59分までの間、One Voice では「100時間いいね!チャレンジ」と題し、ネットを中心に賛同の輪を広げていきました。集まった賛同の数は8500を超え(27日19時時点)大きな盛り上がりとなっています。

 今後は賛同の声と、賛成派の議員との連携により、ネット選挙運動解禁に対するプライオリティをあげ、委員会が開かれ法案が通過することを目指します。

 もちろん、ネット選挙運動を解禁することにデメリットもありますし、どの段階まで解禁するのか、ガイドラインをどう作っていくのか等の細かな議論は必要です。しかしながら、インターネットという、有権者・候補者にかかわらず一人一人が世の中に向かって声を上げる場が選挙において規制されている状況を変えてこそ、現在の状況にかなう新たな有権者と政治の関係が生まれると確信しています。ぜひ、そのような状況を作っていきたいと思います。

(原田謙介)

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政策男子部> 永田町や霞が関、地域の政策形成の現場を知り、本質的で具体性ある政策づくりに関わってきた20~30代の男子を中心とした「部活」です。社会を担う責任世代として、私たちは政策を練り、汗を流し、時代の潮流を作っていきたいと志しています。部活を通して、世代や立場を超えた多くの方々と出会っていきたいです。

政策男子部発起人【年齢は発足日時点】:

・伊藤和徳(地方議会政策実現支援機構GUESS代表、元衆議院議員秘書、28歳)

・金沢一行(NPO法人政策過程研究機構理事、31歳)

・藏田幸三(地方自治体公民連携研究財団、37歳)

・橘美樹(NPOシンクタンク理事、霞ヶ関住人、32歳)

・原田謙介(One Voice Campaign発起人、学生団体ivote前代表、26歳)

・間中健介(NPO法人小児がん治療開発サポート理事、MBA、37歳)

・村田章吾(柏市議会議員、33歳)

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