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日本を超える韓国の活力――選挙が明らかにした両国の姿

金恵京

金恵京

 2012年12月19日、韓国史上初の女性大統領にして、親子二代でその任に就く朴槿恵(パク・クネ)氏が勝利宣言を行った。そして、その4日前には当初の予測通り、日本の衆議院選挙で自民党が大勝し、安倍政権の発足が決定した。

 韓国はこれまで日本の状況と似通った傾向を示しながら、時が経つとそれを超える道筋を歩んできた。世界で最も極端なものとなった少子化傾向や、サムスンなどの家電産業を想起していただければ、分かりやすいのではないだろうか。そして、今回の選挙結果に関しても、同様のことがいえる。

 日本は近年、政治家の世襲が問題となり、国会でもその存在が目立つようになった。その中で、2007年の福田康夫氏の首相就任で親子二代の総理経験者を出すに至り、傾向は明確なものとなった。各種メディアからの言説を見ると、その支持者は世襲に安定や郷愁を見出しているようである。

 福田首相の就任から5年が経った今日、国内の深刻な格差の発生や、世界的な不況に悩まされる韓国において、かつて父親の朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領に率いられ、経済発展を成し遂げた記憶が安心感となって、朴槿恵氏は支持を集めた。

 今回の大統領選挙期間中、朴氏はテレビ討論会で、対抗馬である文在寅(ムン・ジェイン)氏の前にある意味で完敗を喫する場面が目立った。にもかかわらず、彼女の知名度の高さや北朝鮮のミサイル発射に対する保守政党として予想される対応(あるいは、父親時代の強硬な姿勢)が後押しし、南北関係や格差の問題はありながらも、朴氏は結果的に大統領の座を射止めるに至った。

 この事態だけを見ると、韓国も日本と変わらないか、あるいは、韓国の状況はより酷いのではと思われるかもしれない。しかし、1ヶ月前まで韓国では、大統領選挙は全く異なる様相を示していた。それは著名なIT起業家の安哲秀(アン・チョルス)氏が候補者として名を連ねていたということである。安氏を支持していたのは、20代や30代の若者であった。彼らは、独学でアンチウィルスソフトを開発し、縁故の無いIT業界で韓国のトップメーカーを作りながら、社会貢献や若者へ夢や希望を語ることを忘れない安氏の姿勢に強く惹かれていた。

 そして、注目すべきは安氏の支持者は20代・30代を中心とした若者で、文氏の支持者はいわゆる「386世代」(1990年代に30歳代で、1980年代に大学生で学生運動を経験し、1960年代に生まれた世代)、朴氏の支持者は父親の記憶のある中高年以降の世代と、今回の韓国の大統領選挙の争点が、既得権益や経済発展の記憶を背景とした世代間の対立にあった点である。

 日本では将来的に負担増の関係から世代間の問題が争点になることが予想されているが、実際には今回の衆議院選挙でも、泡沫候補を除けば、特定の年代に支持が集中する候補者は生まれなかった。

 このように韓国の変化が早い理由を改めて考えれば、社会全体の変革のスピードが急であることに行き着く。先進国、特に日本に対してであるが、「追いつけ、追い越せ」をスローガンにしている。目標が明確であるぶん、物事は迅速に行われる。これは日本が欧米に対して、明治時代より同様の意識をもって邁進してきた過程と重なる。そして、日韓両国が、より近い社会構造を持っているぶん、韓国はよりスムーズに日本を捉えることができた。

 ただし、韓国の変化にスピードがあるとはいえ、積み残した課題も少なくない。 ・・・続きを読む
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筆者

金恵京

金恵京(きむ・へぎょん) 日本大学危機管理学部准教授(国際法)

国際法学者。日本大学危機管理学部准教授、早稲田大学博士(国際関係学専攻)。1975年ソウル生まれ。幼い頃より日本への関心が強く、1996年に明治大学法学部入学。2000年に卒業後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程に入学、博士後期課程で国際法によるテロリズム規制を研究。2005年、アメリカに渡り、ローファームMorrison & Foester勤務を経て、ジョージ・ワシントン大学総合科学部専任講師、ハワイ大学東アジア学部客員教授を歴任。2012年より日本に戻り、明治大学法学部助教、日本大学総合科学研究所准教授を経て現在に至る。著書に、『テロ防止策の研究――国際法の現状及び将来への提言』(早稲田大学出版部、2011)、『涙と花札――韓流と日流のあいだで』(新潮社、2012)、『風に舞う一葉――身近な日韓友好のすすめ』(第三文明社、2015)、『柔らかな海峡――日本・韓国 和解への道』(集英社インターナショナル、2015)、最新刊に『無差別テロ――国際社会はどう対処すればよいか』(岩波書店、2016)。

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