メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

プライバシーを裸にする無人偵察機

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 やがて3月11日の震災の2回目の記念日がやってくる。それは、震災と同時に起こった福島第一原発の事故の記念日でもある。

 この原発事故では作業用ロボットに注目が集まった。放射能を恐れないロボットが、調査に入った。ロボットを製造したのは、アメリカのアイロボット社である。ルンバというお掃除ロボットで知られている。そして戦場では、同社製のロボットが地雷などの処理に使われている。

 こうしたロボットの中でも特に注目が集まっているのが無人航空機である。英語ではドローン(drone)と呼ばれている。このドローンがオバマ政権によって多用されてきた。アメリカが敵とみなした人物を監視し殺害するのに使われてきた。誤爆の例も指摘され、その使用が論議を呼んでいる。

イタリア北部、トリノ市警が捜査に導入した無人小型ヘリ=スタンパ紙提供

 ドローンはアフガニスタン、パキスタン、イエメン、ソマリアなどで使われている。そして新たにアフリカのマリにも投入が伝えられている。

 ドローンのパイロットは、中東やアフリカを飛行している無人機をアメリカ本土の基地から操縦している。仕事が終われば、自宅に戻り家族と団らんを楽しむという日常である。戦場と日常が融合した不思議な光景が展開している。戦士が戦場にいる必要がなくなった。

 パイロットたちは、しかしながら攻撃後に大変な心理的な負担に苦しむという報道も興味深い。敵兵を殺すというのは、戦場においては常に冷酷な現実であったが、これまでは少なくとも知らない人物を兵士は殺してきた。

 ところがドローンのパイロットは、相手を神のように上空から見つめ続けている。しかも、かなりの長期にわたってである。心理的な負担なく相手を殺すには、知り過ぎているのである。それが、殺害後の心理的な障害を引き起こしているようである。

 ドローンに関する議論の、新しい焦点は、無人機の

・・・ログインして読む
(残り:約553文字/本文:約1301文字)