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ノアの方舟を本当に造るアメリカ人

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 イリノイ州の一部などアメリカ中西部で洪水が起こっている。つい最近まで雨が降らずに干ばつに苦しんでいた地域が、今度は洪水で苦しんでいるわけだ。地球温暖化の悪影響なのか、世界的に気候が不順である。あたかも神が怒っているかのようである。

 神の怒りと洪水といえば、そのアメリカで「ノアの方舟」を建造する計画が進んでいる。洪水対策ではなく、聖書の正しさを証明するためである。

 このノアの方舟の話は聖書の創世記に出てくる。世に悪が満ちたのを怒った神が、大洪水を起こして悪人を滅ぼそうとした。しかし、善人であったノアの一族は、神の命令を受けて巨大な船を建造し、その中に多くの動物のひとつがいとともに入る。やがて雨が降り始め、地は水におおわれる。全ての人や動物が滅ぼされる。例外は方舟の中の人と動物たちのみであった。やがて雨がやみ、ノアの方舟は、アララト山にたどりつく。

 この聖書の記述に基づいてノアの方舟を現代のアメリカに再建しようとの動きがあると、イギリスの経済紙『フィナンシャル・タイムズ』(4月6日付)が伝えている。

南部のケンタッキー州に本部を置く、「答えは創世記にある」という団体が、計画を推進している。この団体の構成員などは、万物は聖書の創世記の記述通りに6日の間に神によって創造されたと信じている。

 進化などという過程によって人間は生まれたのではない。人は自らの形に似せて神が創造したのだ、との固い信念を持った人々が、アメリカには多い。世論調査で知られるギャロップ社の2012年の調査によれば、アメリカ人の半分は神による天地創造を信じている。これは進化論を信じている人々の3倍もの比率である。

 しかしながら、この聖書を文字通りに信じている人々は、世界各地で発見される恐竜の化石などをどう説明するのであろうか。進化の過程の証拠とされる化石は聖書の記述と矛盾しないのだろうか。

 説明は簡単である。

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