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シリーズ「政治はネットで前進するか!?」 第2回 ネット以外の選挙運動の見直しも~政策男子部~

間中健介(政策男子部部長、関西学院大学客員研究員)

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法によって「すれ違い」が演出されている

 政治家を選ぶプロセス自体が偶然に左右されている。若者の大半にとって選挙の候補者を知る機会は、駅頭・街頭でたまたま候補者の主張を聞くことが出来るか、マニフェストやビラを入手できるか、さもなくは公営掲示板でポスターを見る、といった程度しかない。

映画『立候補』について語る藤岡利充監督(中央)拡大映画『立候補』について語る藤岡利充監督(中央)
  平日昼間に政見放送を見ることのできる若者は少ないし、集会や討論会の開催情報はそもそも限られた層にしか伝わらない。Amazon.comがどんなに優良企業であるとしても、マニフェストの注文受付や宅配には対応してくれない。

 ネット選挙運動の解禁は、この偶然に左右されている状況を改善し、国民の利便性を高める効果がある。ただし、ネット以外の選挙運動規制を現代社会のライフスタイルに合うように見直していかなければ、国民と候補者は、いつまでもすれ違ったままだ。

公職選挙制度こそ“地方分権”が望ましい

 自由民主党ネットメディア局次長の福田峰之衆議院議員は5月上旬に出演したインターネット番組のなかで、全国一律で選挙手法が決められている現状に異議を唱えた。

 同議員が地盤とする横浜市緑区・青葉区のような都心近郊の住宅街では、住民の多くが域外に出ている平日昼間に選挙カーを走らせるのは効率的ではないし、道路の混雑する週末に選挙カーで名前を連呼するのは住民から歓迎されない。

 その一方、北海道の各選挙区のように面積の大きな選挙区や、岐阜4区のように農山村の選挙区、長崎3区のように離島を多く有する選挙区では自動車や船舶は必須だ。運転者、燃料も考慮すると、都市部の候補者と比較して多額の輸送コストを払わなければならない。

 日本最北の衆議院小選挙区である北海道12区の面積は14,741平方キロメートル。岩手県に匹敵する広さで、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の全71小選挙区を足した面積(13,547平方キロメートル)よりも広い。最も狭い東京10区と比べると650倍以上の広さである。

 300の衆議院小選挙区は、地形も面積も人口動態もまちまちであり、望ましい選挙手法が異なる。選挙事務所についても、衆議院小選挙区選挙の場合、候補者は1つの選挙事務所しか開設することが認められないが、それこそ岩手県全域に匹敵する広さを1つの事務所でカバーするのは大変な労苦だ。単に面積の差だけではない。公共交通機関や高速情報通信網が整備されていない地域と都市部とでは、距離の感覚が違う。

 公職選挙制度においては、選挙区の事情に関わらず、選挙事務所の数、選挙カーの台数、はがきやポスターの枚数は同一に定められている。そうすることが地域の実情やライフスタイルに照らして適切なのか、この機会に見つめ直す必要はあるかもしれない。

候補者全員が「有力候補」に

 制度上の問題は少なくないとはいえ、国民にとって選挙は、議会における代表者や自治体の長を選ぶことのできる貴重な機会であり、候補者にとっては国民に自らへの支持を訴えることができる貴重な機会である。立候補の権利は保障されており、いつの選挙でも、多くの候補者が出現し、国民の前で主張を展開する。

 しかし、権利が保障されているということは、全員が平等に扱われることと同意ではない。選挙管理委員会(選管)が発行する選挙公報では候補者全員に同じ大きさのスペースが提供されるが、候補者個々の“選挙力”の差を選管が埋めてくれるわけではない。地盤も資金力もない候補者のためにポスター掲示やマニフェスト作成を選管が代行するはずはなく、演説の場に聴衆を集めてくれることもない。

 選挙が近づくとメディアは候補者を知名度や活動量、実績、所属政党の性質等によって「有力」「当落線上」「当選困難」「その他」などと色分けをし、有力候補と「その他候補」の扱いを明確に変える。地域の団体が開催する討論会では、当選可能性の低いと見込まれる候補者は招かれない場合が多い。「その他候補」は戦う前から敗者として扱われ、主張をする権利が与えられない。にもかかわらず、なぜ多額のコストを払ってまで立候補をするのか。

 「決して売名行為ではなく道楽でもない。強い志は感じるし、政治への不満を純粋に訴えたいのだと思う」

 6月29日から上映予定の映画『立候補』(http://ritsukouho.com/)の藤岡利充監督と製作者の木野内哲也氏は、独自の選挙戦を展開することで有名なマック赤坂氏とその息子、外山恒一氏、羽柴誠三秀吉氏らに密着し、彼らの行動の根底にあるものを表現した。

 「彼らは皆、当選が極めて困難であることを理解しつつ、少しでも多くの票を得たいと思っており、いつか自分の手法で勝利したいと願っている」

 映画では、各々の「その他候補」が自分たちの言葉と手法で、少しでも支持者を増やそうと努力している様子が映し出されている。試写会にゲストとして訪れたPRコンサルタントの中村峰介氏は「こうした候補者にとってネット選挙運動解禁は多少の追い風になる可能性はある。

 党が候補者の主張を縛る昨今の傾向のなか、候補者が自分の言葉で語る姿を見たいという国民のニーズはある」と語る。身軽な分、コミュニケーション手法次第では、政党所属の有力候補者よりも支持者を拡大できる余地は、きっとある。

 もっとも、理想は候補者全員が「有力候補」になることだ。地盤や知名度、資金力で劣勢にある候補者は、その不足を凌駕するほどの努力をすればよい。それはすなわち、真剣に国民と課題を共有し、適切な政策を立案し、国民一人ひとりに伝える努力をする、という3点である。誰であれ、このために時間と知恵を費やし、国民と政治のすれ違いを埋めてくれる人材に、政治家の地位を担ってほしい。

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間中健介(政策男子部部長、関西学院大学客員研究員)

協力:『メディア・コミュニケーション研究会』(メデコミ会)http://www.kohoman.com/