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 カンボジアの最高権力者フン・セン氏が首相になったのは、今から28年前。世界で最も長い在位期間の指導者の一人でもある。その彼が率いる与党・人民党の体制が大きく揺らいでいる。7月28日の総選挙で、下院の過半数の議席をかろうじて守ったものの、サム・レンシー党首率いる野党・救国党が躍進を果たしたからだ。

投票するフン・セン首相=2013年7月28日、カンボジア南部カンダール州タクマウ拡大投票するフン・セン首相=2013年7月28日、カンボジア南部カンダール州タクマウ
 フン・セン体制はこのまま崩壊への道を進むのか、それとも、強権体制延命のために打つ手を成功させるのか、カンボジアの行方は混沌としている。

 選挙戦終盤の首都プノンペンを訪れると、街頭では、大音響の音楽を流しながら、支持を訴える与野党の選挙カーや、党の旗を掲げて走るバイクデモの長い列に出会った。

 勢いを感じたのは救国党だ。投票日前日の集会では数千人の若者が、地方の遊説から帰ったサム・レンシー氏を熱狂的な歓呼と拍手で迎えた。

 予想通り、首都プノンペンや隣接する州で救国党が人民党を抑え込んだ。さすがに党組織が強い地方部では人民党が勝ったが、人民党の暫定集計をみても、全国の定数123の議席のうち人民党は68議席(5年前の前回総選挙の獲得議席90)と前回から20議席以上減らし、救国党は55議席(同29)と議席を倍近く増やした。

 野党を躍進させたのは、長期政権の腐敗や癒着に辟易している若い世代と、経済発展の恩恵を受けていない建設労働者や運転手、低所得層だ。救国党は、年金上乗せや最低賃金の引き上げなど、具体的な数字を盛り込んだ公約を示し、彼らの不満を吸い上げた。

 現地で選挙戦を追ったカンボジア市民フォーラムの山田裕史事務局長は「人民党の候補者は、内戦を終わらせる和平合意や経済発展など過去の成功ばかりを訴えていたが、救国党の候補者は、未来のカンボジアをどう造るかを語っていた。若者が起爆剤となって、救国党への支持が他の世代にも広がった」と語る。

 さて、人民党はこの「敗北」にどう対応するのか。 ・・・続きを読む
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筆者

脇阪紀行

脇阪紀行(わきさか・のりゆき) 大阪大学未来共生プログラム特任教授(メディア論、EU、未来共生学)

1954年生まれ。79年に朝日新聞社に入社、松山支局などを経て大阪本社経済部に。90年からバンコクのアジア総局に駐在。米国ワシントンでの研修を経て97年からアジア担当論説委員。2001年からブリュッセル支局長。06年から論説委員(東南アジア、欧州など担当)。2013年8月末に退社、9月から、大阪大学未来共生イノベーター博士課程プログラム特任教授。著書に『大欧州の時代――ブリュッセルからの報告」(岩波新書)、『欧州のエネルギーシフト』(岩波新書)。

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