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日経が伝えないトルコとの戦車エンジン共同開発の真実(下)――日本がパートナーを組むべき国はどこか?

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 現在のところ我が国がどのようなスキームでこのエンジン共同開発に望むかは決まっていない。一番簡単なのは、ディーゼルエンジンは「汎用品」であるとすることだ。実際にドイツや英国は、中国に対してそのようにして戦車のエンジンを輸出、あるいはライセンス生産させてきた。

 また我が国も先ごろ、英国のロールス・ロイス社に対して、海上自衛隊の護衛艦に使われているエンジン部品(川崎重工のライセンス生産)の輸出を容認した。これらの部品は英海軍艦船へ提供される。汎用品扱いが一番自然だ。

 これまで米国などとの共同開発や輸出は特例としてきたが、特例ばかりでは規制がなし崩し的に骨抜きになる。またJSF(統合打撃戦闘機)の共同生産に関して、政府は苦しまぎれに国連憲章に基づいて輸出するという噴飯ものの解決策を採用してきた。

 これは米国以外の国々にも供給されるためだが、国連憲章に沿って行動するならば、我が国がPKFや国連軍に参加することも可能になるはずだ。こういう子供だましのような抜け道探しばかりをしていては、国際的な信用を損なうことになる。

 当然ながら何が汎用品であるかの規定を厳格かつ公平にするべきだ。汎用品といっても厳しく制限すべき製品もある。

 例えばソニーのビデオカメラの目ともいえるCCD素子だ。軍用に耐えるCCD素子は筆者の知る限りソニーしか製造していない。これはイスラエルやロシア、そして恐らくは中国を含め世界中の軍隊でビデオカメラ、暗視装置、レーザー測距儀などを組み合わせた電子・光学センサーポッドに使用されている。

 これらはUAV(無人機)や攻撃ヘリ、偵察車輌などに使用されている。さらに米国の空対地ミサイル、マーベリックやセルビアの対戦車ミサイル、ALAS(Advanced Light Attack missile System)などのシーカーとして使用されている。

 これらは当然ながら世界の紛争地域で実戦に使用されている。先のロシアとグルジアの戦争でも両陣営でソニーのCCD素子は使用されていた。

 ところがこれは「汎用品」なので武器禁輸の規制に触れない。また外国の兵器メーカーでは日本製の工作機械が多く使用されている。これは小銃や装甲車など、どこでも製造できる兵器の輸出よりもよほど「悪質」である。これを日本政府が黙認しているのは不思議としか言いようがない。

 我が国の場合、武器の輸出管理は経産省と税関が行っているが、これが極めて人治的である。経産省の担当部署の担当者が変わるとシロがクロになったりする。また税関では根拠がないのに武器扱いをして輸出入を妨害したりする。

 例えば近年税関は米国製のタクティカル・ペンの輸入を「武器」に当たるとして差し止めた。これは金属製の頑丈なボールペンで、格闘にも使えるというものだ。だが

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