「中道左派」再登場の意味
2015年01月12日
(承前) このような観点から見ると、三つどもえの民主党代表選の構図は大きな意味を持っていることがわかる。
前原誠司氏らの支持を受ける細野豪志氏は、共同記者会見(1月7日)で「あるべき民主党像」を問われて「共生や多様性こそ保守から出てきた」と言っているように、党内では保守的であり中道右派とみることができる。だから、今回の代表選では政界再編論を封印しているとはいえ、もともとは「維新の党」との合同に前向きだったわけである。
野田佳彦元首相や枝野幸男氏ら民主党政権時代の幹部達が支持する岡田克也氏は、細野氏と同様に保守的な傾向がある。
たとえば集団的自衛権行使容認の閣議決定には反対だが、その行使そのものや原発再稼働に関して、両氏とも明確な反対の立場を取らずに条件付きで限定的に容認する可能性を示唆している。
ただ、岡田氏は、自ら「リベラルよりもう少し幅広く保守中道、中道リベラル」としているように、細野氏よりは中道的な傾向も存在する。
これは、まさに民主党政権の自壊を招いた現実主義的中道ないし中道右派とみなせよう。その路線を継続しようとするわけだから、政党再編問題に関しては自主再建派とみなされるわけである。
当初は、「細野 対 岡田」という対決と思われていたが、長妻昭氏が立候補したことによって、三つどもえの構図となった。これは、政治的理念をめぐる競合という点からは重要な展開である。
長妻氏は、かつて年金問題で自民党政権を鋭く批判して政権交代の立役者となり、民主党政権時代には厚生労働大臣となった。そして、主流派が現実主義化して官僚に妥協する中で、「脱官僚」の理想を堅持して最後までもっとも厳しく官庁と対峙したことで知られる。
党首選におけるその主張の柱は、大きく言えば、格差是正、集団的自衛権行使反対、脱原発などの方向であり、自ら「リベラル」を唱えているように中道左派とみなせる。
このような主張ならば、与党との相違は明確になり、かつての二大政党の政策的対峙という図式が再生して、与党への批判票を集めることが可能になるだろう。だから、「維新の党」との合同を早急に目指すよりも、まずは自主再建に重点を置くということになる。
長妻氏の立候補により、代表選は「中道右派 対 現実主義的中道・中道右派 対 中道左派」という構図となった。しかも、「岡田・細野 対 長妻」という対立においては、民主党政権時代における「現実主義 対 理想主義(脱官僚、新しい公共、格差是正など)」という対立軸が現れていると考えられる。
政党システムの分極化という傾向をもたらしたのは、中道左派が衰退してしまったからである。一度は民主党から消滅したようにすら見えた中道左派の理念が再登場したことは、日本の政党政治の未来にとって少なからざる意味を持ちうるかもしれない。
民主党にもし再生する可能性があるのなら、そのための必須の要件は、
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