イスラーム文明に対する日本文明の役割とは?
2015年01月24日
イスラム過激派組織「イスラム国」のメンバーらしき男が日本人二人を拘束して、2億ドルを要求して72時間以内に支払わなければ殺害するとネット上の動画で予告した(1月20日)。日本政府が期限と目した時刻は過ぎたが、まだ安否は定かではない。
その動画は、安倍首相の中東訪問を伝えるNHKのニュースで始まり、英語で「中東地域への援助と円借款を発表し、地域の過激主義の広がりに懸念を示した」と伝えるシーンや安倍首相の演説場面を映し出してから、「日本の政府と国民へのメッセージ」という題名が現れる。
そして、黒い覆面の男がナイフを振りかざしながら「日本の首相へ。あなたは『イスラム国』から8500キロ以上も離れているのに、自ら進んで十字軍への参加を志願した」「『イスラム国』と戦うために2億ドルを支払うという馬鹿げた決定をした」と非難して、それと同額の身代金を要求した。
つまり、この覆面の男たちは、安倍首相が十字軍への参加を志願したとみなして、このような殺害予告を行ったわけである。
実際には、日本政府は軍事的に十字軍に加わろうとしたわけではなく、「イスラム国」から逃れた難民や避難民への支援として、周辺諸国に2億ドルの拠出を約束したのであり、非軍事的な人道的目的のためのものである。だから、日本政府から見れば、これは完全な誤解であり、現在は、この真実を伝える努力が続けられている。
これに対して、日本政府の責任を問う声もある。安倍首相の演説はイスラーム過激派からは敵そのものであるイスラエルで行われ、この事件が起きた後もそのスピーチはイスラエル国旗を背景に行われている。
また、安倍首相が約束した周辺諸国への2億ドルの供与は、イスラム国と一定の関係を保っているトルコには行われず、さらに、安倍首相のスピーチが、誤解を招きやすい英語に翻訳されていた、という指摘もある。
しかも、すでにフリージャーナリスト・後藤健二氏の妻が2014年11月から今年1月にかけてイスラム国関係者からの20億円超の身代金を要求され、それを警察に通報していたことが明らかになっている。だとすれば、それを知った上でイスラエルで首相がこのようなスピーチをすることは、イスラム国を刺激するリスクを犯したことになる。
この論戦でどのような立場を取るにしても、明白なのは、安倍首相が中東を訪問しイスラエルという地で積極的平和主義をアピールしようとしたことが、この殺害予告ビデオへとつながったということである。
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