次なる犠牲者を出さないために
2015年02月06日
痛ましくも、湯川遙菜氏に続いて後藤健二氏が殺害された。
たとえば、交流サイトの「I AM KENJI(私はケンジ)」という言葉に共感の思いを寄せたり、追悼の意や連帯感を表明している。
しかし、この事件は後藤氏殺害では終わらないかもしれない。
公開された映像(2月1日早朝)で黒衣装の男はナイフを持ちながら「安倍よ、勝ち目のない戦いに参加するという無謀な決断によって、このナイフは健二だけを殺害するのではなく、お前の国民はどこにいたとしても、殺されることになる。日本にとっての悪夢を始めよう」と述べたからである。
人質二人の殺害からもわかるように、「イスラム国」は予告したことをそのまま実行することが多い。だとすれば、このメッセージは深刻な意味を持つ。
つまり、今後、中東地域でも、そして日本国内でも、「イスラム国」は日本人の殺害を目指して行動を起こす可能性が十分にあるのである。
これは、安全に暮らしたい日本人にとってまことに由々しき事態である。「イスラム国」の予告を真剣に受け止めて、そのような事態が再発しないように政府は最善を尽くすべきだろう。
安倍首相は、この映像を受けて早朝の会見で「テロリストたちを絶対に許さない。その罪を償わせるために、国際社会と連携してまいります」と強い言葉で「イスラム国」を非難した。そして、参院予算委員会では「法によって裁かれるべきだろうと考えている」「国際社会と連携して、犯人を追い詰める」とも語った(2月2日)。
これらは、人質を殺された米英の首脳と同じ言葉遣いである。
オバマ大統領は2014年9月に米国人ジャーナリストが殺害された際に「当然の報いが下されると思い知るだろう」と述べて、約3週間後に「イスラム国」の拠点への空爆をシリア領内に拡大した。
英国のキャメロン首相も同じ9月に、最初の英国人人質殺害事件の後の記者会見で「犯人を捕えて裁きを受けさせる」と述べ、同月内に下院でイラク領内での空爆参加の承認を受けた。
だから、米英首脳のこれらの言葉遣いは、「イスラム国」への新たな軍事的攻撃を行うという決意の表明なのである。
ところが、菅官房長官は、この首相の発言について、日本は有志連合には入らないし、自衛隊の後方支援もしない、と明言した。だから、日本の今後の行動は米英とは異なることになる。
しかし、それならばなぜ安倍首相はあえてこのような言葉使いをしたのだろうか?
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