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「イスラム国」を「法で裁く」には(下)

軍事介入の課題と日本の役割

金恵京

「法の裁き」の前提

 「イスラム国」を崩壊させるには、幾つかの方法が想定される。経済制裁と軍事的介入がそれに当たるであろう。その二つの方法は共に、大国が主導するのみでなく、国連がそれに認可を与えることが求められる。

 経済制裁に関しては、国連憲章第7章において平和回復の段階の一つとされ、安全保障理事会の3分の2以上の賛成、および常任理事国の拒否権の発動が無い場合に執行される。

 ただ、実際に現在までのところ、周辺諸国からの「イスラム国」への圧力は強まっており、今後の経済制裁の効果は十分に上がらないものと見られる。

 もう一つの解決手段であり、恐らく最も現実的な対応といえる軍事的介入に関しては、国連の歴史から捉えなおす必要がある。

 「集団的安全保障」は侵略の危機に瀕する他国に組織の加盟国が共同で対応するものである。その必要性が語られるようになったのは、第二次世界大戦前、国際連盟が枢軸国の暴走を止められなかったことが起源となっている。

 つまり、不介入の原則を重視するあまり、暴走する国家の拡大を許しては将来の大きな禍根となるという認識が戦後、共有されたのである。

 前掲のように、「イスラム国」はナチスドイツですら隠蔽しようとした自らの非道な行為を公然と表明し、弱者への圧迫を自らの力に変える性質を持っている。

 つまり、彼らの存在自体が国際社会の脅威であり、放置したならば被害が拡大することを考えれば、「イスラム国」とその支配地域をめぐる状況は集団的安全保障の概念に基づく案件であると思われる。

 しかしながら、「イスラム国」が国家ではないことを踏まえれば、1945年に作られた国連憲章に基づく国連主導の軍事行動はとり難い。そこで、現在行われている有志連合の空爆をはじめとした行動に対して、国連の安保理と加盟国による武力行使容認決議を行うことが国際的な支持や合意を取り付ける上で有効な方法といえる。

軍事介入に欠かせない長期的視野

 ただ、そうした国連の認可を受けた活動を行い、「イスラム国」の支配を終了させたとしても、シリア国内には別の課題が残る。 ・・・続きを読む
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筆者

金恵京

金恵京(きむ・へぎょん) 日本大学危機管理学部准教授(国際法)

国際法学者。日本大学危機管理学部准教授、早稲田大学博士(国際関係学専攻)。1975年ソウル生まれ。幼い頃より日本への関心が強く、1996年に明治大学法学部入学。2000年に卒業後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程に入学、博士後期課程で国際法によるテロリズム規制を研究。2005年、アメリカに渡り、ローファームMorrison & Foester勤務を経て、ジョージ・ワシントン大学総合科学部専任講師、ハワイ大学東アジア学部客員教授を歴任。2012年より日本に戻り、明治大学法学部助教、日本大学総合科学研究所准教授を経て現在に至る。著書に、『テロ防止策の研究――国際法の現状及び将来への提言』(早稲田大学出版部、2011)、『涙と花札――韓流と日流のあいだで』(新潮社、2012)、『風に舞う一葉――身近な日韓友好のすすめ』(第三文明社、2015)、『柔らかな海峡――日本・韓国 和解への道』(集英社インターナショナル、2015)、最新刊に『無差別テロ――国際社会はどう対処すればよいか』(岩波書店、2016)。

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