優先されるべきは、「多数決」ではなく「立憲主義の論理」
2015年06月17日
立憲主義が主題の衆院憲法審査会で、民主党議員から安保法案について問われ、参考人として呼ばれた憲法学者3人全員が違憲と明言したことが大きな話題になっている。
野党が推薦した憲法学者だけではなく、自民党が推薦した長谷部恭男・早稲田大学教授までもが、従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかず、法的安定性を大きく揺るがすから憲法違反である、と明言したからである。
しかも、この3人の憲法学者は、全員がいわゆる平和主義的な護憲派の憲法学者というわけではない。
長谷部教授は自衛隊合憲論を主張しており、2013年の特定秘密保護法案の審議で自民党推薦の参考人として賛成意見を述べた。
また、民主党推薦の小林節・慶應義塾大学名誉教授は、同じく自衛隊合憲論者で長らく改憲派の憲法学者として知られてきた。その小林氏が、仲間の国を助けに海外に戦争に行くのは憲法違反であり、政府が論理的に積み上げてきたものが論理的に吹っ飛んだ、と批判したのである。
だから、この憲法学者たちは決して共産党や社民党のような護憲派の政治的姿勢に共感しているのではなく、まさに憲法そのものの法的論理に基づいて違憲論を主張したのである。
政府はこの違憲論に反論し、改めて、砂川判決の一部の文章を根拠として、合憲とする政府見解を出した(6月9日)。
しかし、憲法学者たちはもともと政府の論理に対して違憲論を主張したのだから、これには明らかに説得力がなく、長谷部教授は「何の説明にもなっていない」と一蹴した。
そして、この政府の論理には、砂川事件当時の弁護団が批判して法案の撤回を要求し(6月12日)、砂川判決を書いた唯一の存命の裁判官も「言いがかりも甚だしい」と批判したという(「報道ステーション」)。私も2014年の連載「集団的自衛権行使は許されるのか」で指摘した通り、この論理は明らかに成り立たないからである。
もし本当に安保法案が違憲であり、それがわかった上でその法案を成立させるならば、その内閣は違憲内閣としか言いようがない。国務大臣や国会議員の憲法尊重擁護義務(憲法第99条)に反するからである。
最高裁で後日違憲判決が出た時には、法案を廃止するだけではなく、民主党・岡田克也代表が述べた(6月12日)ように総辞職が求められるというのは当然だろう。
逆に、違憲であることがわかった上で法案の成立を強行するならば、それは「憲法クーデター」としか言いようがない。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください