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安保法案について、国会で全憲法学者を調査せよ

優先されるべきは、「多数決」ではなく「立憲主義の論理」

小林正弥 千葉大学大学院人文社会科学研究科教授(政治学)

政治的立場を超えた3憲法学者の違憲論

 立憲主義が主題の衆院憲法審査会で、民主党議員から安保法案について問われ、参考人として呼ばれた憲法学者3人全員が違憲と明言したことが大きな話題になっている。

 野党が推薦した憲法学者だけではなく、自民党が推薦した長谷部恭男・早稲田大学教授までもが、従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかず、法的安定性を大きく揺るがすから憲法違反である、と明言したからである。

 しかも、この3人の憲法学者は、全員がいわゆる平和主義的な護憲派の憲法学者というわけではない。

 長谷部教授は自衛隊合憲論を主張しており、2013年の特定秘密保護法案の審議で自民党推薦の参考人として賛成意見を述べた。

 また、民主党推薦の小林節・慶應義塾大学名誉教授は、同じく自衛隊合憲論者で長らく改憲派の憲法学者として知られてきた。その小林氏が、仲間の国を助けに海外に戦争に行くのは憲法違反であり、政府が論理的に積み上げてきたものが論理的に吹っ飛んだ、と批判したのである。

 だから、この憲法学者たちは決して共産党や社民党のような護憲派の政治的姿勢に共感しているのではなく、まさに憲法そのものの法的論理に基づいて違憲論を主張したのである。

 政府はこの違憲論に反論し、改めて、砂川判決の一部の文章を根拠として、合憲とする政府見解を出した(6月9日)。

 しかし、憲法学者たちはもともと政府の論理に対して違憲論を主張したのだから、これには明らかに説得力がなく、長谷部教授は「何の説明にもなっていない」と一蹴した。

 そして、この政府の論理には、砂川事件当時の弁護団が批判して法案の撤回を要求し(6月12日)、砂川判決を書いた唯一の存命の裁判官も「言いがかりも甚だしい」と批判したという(「報道ステーション」)。私も2014年の連載「集団的自衛権行使は許されるのか」で指摘した通り、この論理は明らかに成り立たないからである。

違憲法案を自覚的に成立させる内閣は違憲内閣になる

 もし本当に安保法案が違憲であり、それがわかった上でその法案を成立させるならば、その内閣は違憲内閣としか言いようがない。国務大臣や国会議員の憲法尊重擁護義務(憲法第99条)に反するからである。

 最高裁で後日違憲判決が出た時には、法案を廃止するだけではなく、民主党・岡田克也代表が述べた(6月12日)ように総辞職が求められるというのは当然だろう。

 逆に、違憲であることがわかった上で法案の成立を強行するならば、それは「憲法クーデター」としか言いようがない。 ・・・続きを読む
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筆者

小林正弥

小林正弥(こばやし・まさや) 千葉大学大学院人文社会科学研究科教授(政治学)

1963年生まれ。東京大学法学部卒業。2006年より千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。千葉大学公共研究センター共同代表(公共哲学センター長、地球環境福祉研究センター長)。専門は、政治哲学、公共哲学、比較政治。マイケル・サンデル教授と交流が深く、「ハーバード白熱教室」では解説も務める。著書に『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう(文春新書)、『サンデル教授の対話術』(サンデル氏と共著、NHK出版)、『サンデルの政治哲学 〈正義〉とは何か』(平凡社新書)、『友愛革命は可能か――公共哲学から考える』(平凡社新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『神社と政治』(角川新書)など多数。共訳書に『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(ハヤカワ文庫)など。

 

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