安保法案強行採決は「憲政」の転覆行為
2015年07月24日
衆議院における安保法案の強行採決に対し、憲法を尊重する人々は憤激し、戦後久しくなかった大規模デモが全国の各所で起こっている。
いわゆる60日ルールによって、参議院で60日以内に議決されなければ、衆議院は参議院が法案を否決したものとみなし、今度は出席議員の3分の2以上の多数で再議決し、法案を成立させることができるからである。
本当に法案成立は確実なのだろうか? 通常の政治過程のようにそう「観測」してよいのだろうか?
実はいま起こっているのは、「憲法の政治」そのものであり、「多数の専制」という力による実質的憲法改定と主権者たる人々の対決である。だから、これは通常の政治のように、国会における多数の力だけで決まるものではないし、決めてよいものでもない。この「戦い」の実相を描いてみよう。
安保法案強行採決に反対する人々の間で、この立法は、いわば「憲法クーデター」であるという理性的認識が広がりつつある(「安保法案の強行採決は、『憲法クーデター』」だ――審議時間はあと数倍~10倍は必要だった」WEBRONZA 2015年7月16日)。
2014年夏の閣議決定について、アメリカの法哲学・政治哲学の権威ブルース・アッカーマン教授は、松平徳仁教授(神奈川大学、公法学)との共同執筆論稿で「憲法クーデター」という見解を明らかにした(『フォーリン・ポリシー』2014年6月27日、「『安倍政権の憲法クーデター』説」WEBRONZA 2014年7月22日)。
強行採決後に、『憲法国際ジャーナル』のブログで「安倍首相による平和憲法の再解釈に反対する日本の学生と市民を支持する憲法学者その他公法学者の声明」が出された(起草者はトム・ギンズバーグ シカゴ大学ロースクール教授)が、アッカーマン教授もそれに署名している。
日本でも、沖縄の地方紙や共産・社民党の政治家たちや、憲法学者の石川健二氏(東京大学)は、2014年夏(7月1日)の閣議決定が「法学的にはクーデターであった」という見解を明らかにしている(「あれは安倍政権によるクーデターだった」ビデオニュース・ドットコム)。
そして、イギリスのインディペンダント紙も、記事(David Mcneill執筆)で「憲法クーデター」というジェフリー・キングストン氏(テンプル大学ジャパン)の見解を紹介している。
つまり、いわゆる平和主義的政治家やメディアだけではなく、共和主義的民主主義や立憲主義の立場からも、「法的クーデター」という見方が示されているのである。
それではこの「法的クーデター」は、
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