「決定的違憲」の安保法制
2015年08月07日
礒崎陽輔首相補佐官の「法的安定性」無関係発言が大問題になり、同氏が参院特別委員会に参考人として呼ばれ、発言を撤回し陳謝したが、辞任は否定した(8月3日)。翌日、安倍晋三首相は更迭しないことを明言したが、その任命責任は免れない。
この発言は、「法的安定性」無関係論と、憲法解釈変遷論と要約することができるだろう。
日本を守るためなら「法的安定性」は無関係だというのなら、国防のためなら権力が法律をどんどん変えていいということになってしまう。これは、憲法を蔑(ないがし)ろにしているというだけでなく、さらに法治国家の大原則にも反し、それを崩壊させかねない発言である。
これでは、人治国家のレベルに戻ってしまう。これは、正義論のいかなる観点からみても、不正な発言としか言いようがない。憲法を重視する正義論はもとより、安倍政権の発想にもっとも近い正義論から見ても(「いかなる正義にも反する安保法案の強行採決(上)――3つの正義論から考える」WEBRONZA、2015年7月13日)、仮に日本の防衛のために安保法制が望ましいとしても、法治を動揺させるマイナスの方がはるかに大きいからである。
この発言は、礒崎氏個人の問題というわけではなく、安倍内閣全体の問題でもある。
安倍首相自身が「憲法は国家権力を縛るものだという考え方は絶対王権時代の主流的な考え方」と近代立憲主義を無視した考えを述べ(2014年2月3日)、中谷元防衛相も「現在の憲法をいかにこの法案に適応させていけばいいのかという議論を踏まえまして閣議決定を行った」(2015年6月5日)と述べたことがあるからである。
安倍首相が礒崎氏を辞任させないのは、実際には自分の考え方と似ているからだろう。
実は、今回の発言は安保法制を合憲とする「憲法学者」の発想とも類似している。
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