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反知性主義を超えるために何をなすべきか(中)

日本の大学が抱える課題と可能性

金恵京

反知性主義を生み出す日本の大学

 日本の現状を見ると、ネット社会の言説では「知の技法」の理解が進まず、政治の面では「知の蓄積への尊重」が足りないとの問題が見て取れる。そうした状況を生んだ背景として、筆者は現在の日本の大学教育に大きな課題があると考えている。

 日本の大学においては、高校時代に記憶力(暗記)を重視した繰り返しの学習を重視する。もちろん、一定量の知識を得るためには詰め込みは必要であるし、韓国においてもそれは同様である。

千葉科学大学拡大「反知性主義」に抗するために、大学の講義に求められるものは何か=千葉科学大学
 ただ、日本の場合、「いかに知を形にするか」あるいは「なぜ知の蓄積が重視されなければならないか」といった内容の講義は大学入学直後に少し行われて、その後は高校と大差ない詰め込み式の講義となっていくことが多い。

 入学後すぐに行われる当該講義においては、ベテラン教員による授業や質の高いテキストが使われるものの、それまで考えて判断する勉強を十分に経てこなかった学生にすれば、認識のギャップは大きい。

 それは、初心者がその道を究めた達人の金言を聞いても、真意はだいぶん後にならないと分からない状況に似ている。

 本来であれば、一定程度、大学の講義内容を理解できるようになった時点で再度方法を学ぶことで、運用がしやすくなるのであるが、そうした機会は余り設けられていない。

 そうして4年間が過ぎ、規定の単位を取り終えると、大学生の大半は社会に出て、大学院生はそうした技法を改めて本格的に学ぶ。ただ、大学院生の技法習得方法も体系的というよりは、断片的に教員からの指導の中で身に付けていく場合がほとんどである。

 自省を込めて言うならば、日本の大学を卒業した筆者自身、「どのように資料を取捨選択し」「従来の研究の蓄積を整理し」「論理を組み立てるための文章構成を学ぶ」といった技法を身に付けたのは大学院に入ってからのことであった。

 もちろん、この方法が全て間違っているとはいえない。筆者自身もその中で育ってきたのであるし、日本の学術の世界はそれがベースになり、高いレベルの結果を出してきているためである。

学問の成果をいかに形にするのか

 ただし、ここで検討しなければならないのは、従来型の「大学=会社員・官僚の育成機関」「大学院=研究者の育成機関」といった仕分けに基づく講義の構成が現代社会に合致しているのか、という点である。 ・・・続きを読む
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筆者

金恵京

金恵京(きむ・へぎょん) 日本大学危機管理学部准教授(国際法)

国際法学者。日本大学危機管理学部准教授、早稲田大学博士(国際関係学専攻)。1975年ソウル生まれ。幼い頃より日本への関心が強く、1996年に明治大学法学部入学。2000年に卒業後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程に入学、博士後期課程で国際法によるテロリズム規制を研究。2005年、アメリカに渡り、ローファームMorrison & Foester勤務を経て、ジョージ・ワシントン大学総合科学部専任講師、ハワイ大学東アジア学部客員教授を歴任。2012年より日本に戻り、明治大学法学部助教、日本大学総合科学研究所准教授を経て現在に至る。著書に、『テロ防止策の研究――国際法の現状及び将来への提言』(早稲田大学出版部、2011)、『涙と花札――韓流と日流のあいだで』(新潮社、2012)、『風に舞う一葉――身近な日韓友好のすすめ』(第三文明社、2015)、『柔らかな海峡――日本・韓国 和解への道』(集英社インターナショナル、2015)、最新刊に『無差別テロ――国際社会はどう対処すればよいか』(岩波書店、2016)。

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