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安保法案採決を前に、野党がとるべき抵抗戦術

不信任決議案、問責決議案、ピース牛歩……

小林正弥 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

参議院の強行採決は「良識の府」の自殺行為

 参議院の安保法制審議は、「良識の府」らしく、衆議院で明らかになっていなかった様々な問題点を浮き彫りにした。

 たとえば、自衛隊の内部資料(統合幕僚監部作成の法案成立後のスケジュール、河野克俊統合幕僚長のアメリカ軍との会談議事録)を共産党が次々と明らかにし、文民統制が犯されていて戦前のような軍の暴走を招きかねない、と批判されている。

 そもそも、もともとこの法案の必要性を首相が説明した邦人輸送中の米艦防護の例でも、中谷元防衛大臣は邦人が乗っていることは絶対的な条件ではないと述べ(8月26日)、立法の根拠すら崩れている。

中谷元・防衛相(中央)の答弁を巡って審議が中断。対応を話し合う安倍晋三首相(左下)や与党理事ら=25日午20150825安保法案で中谷元・防衛相(中央)の答弁を巡って審議が中断した参院特別委員会=2015年8月25日
 これらは、いずれも巨大な問題であり、本来ならばそれらの1つだけでも安保法制の成立は不可能になってしまうほどの深刻な意味を持つ。

 しかも、政府の答弁が行き詰まって、なんと95回以上も審議が中断し、審議時間は9月1日の時点でまだ63時間に過ぎないから、審議時間が不十分と批判された衆議院よりもさらに少ない。

 審議は十分に尽くされたどころか、次々と問題点が浮上している。

 これに対応して、国民の間でも今回の成立に反対する人は6割以上に及んでいる(JNN調査、賛成30%、反対61%、9月7日)。

 さらに、山口繁・元最高裁長官までもこの法案を違憲と明言し(朝日新聞、9月3日)、大森政輔・元内閣法制局長官も参議院特別委員会の参考人として違憲と述べた(9月8日)。

 それにもかかわらず、9月27日の国会会期末を念頭に、与党は地方公聴会の開催すらしないで安保法案を14日の週に採決する方針を明らかにした。

 このため特別委員会では、9月8日に鴻池祥肇委員長が野党の同意なしに理事会を再開し、野党が委員長席に詰め寄って抗議する中で、中央公聴会を15日に開催することを強引に議決した。

 与党は16日の特別委員会採決、17日の本会議採決を目指していると伝えられているので、このまま強行採決に進むのだとしたら、参議院は「良識の府」たる役割を自ら放棄すると言わざるを得ないだろう(「安保法案で『良識』が問われる参議院――主権者は『クーデター』を失敗させられるか?」WEBRONZA)。

 このような動きに対して、民主、維新、共産、生活、元気などの野党6党は、強引な採決に反対して、野党間で連携して対応することを確認した(9月4日)。野党は、どのようにこの採決に臨むべきだろうか?

法を遵守するための正義の戦い

 参議院でこの法案が「成立」すれば、いよいよ「憲法クーデター」が達成されたことになる。

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