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[4]ドイツは途方もなく大きな困難と直面する

熊谷徹 在独ジャーナリスト

メルケルを攻撃する保守勢力

 だがドイツが、今後途方もなく大きな困難と直面することは、確実だ。100万人にも及ぶ難民を一度に受け入れることで、この国は米国のような移民国家の性格を一段と強めるだろう。

 ドイツの保守勢力だけでなく、一部の市民からも、「これだけ多数の難民を一度に受け入れて、大丈夫なのか。彼らを社会に統合させ、社会保障制度に依存させずに自立させることは、可能なのか」という声が上がっている。また「現在学校の体育館や、見本市の会場などに難民たちを住まわせているが、いつまでこの状態が続くのか。冬が近づいており、彼らをテントの中に寝かせることはもうできない」という声も聞こえる。

ハンガリー南部レスケで、収容施設に向かうため整列させられた難民ら。移動中にけがをし、松葉杖をつく人もいた=9月13日拡大ハンガリー南部レスケで、収容施設に向かうため整列させられた難民ら。移動中にけがをし、松葉杖をつく人もいた=9月13日
 ミュンヘン駅に多数の難民が到着してから1週間が経ち、メルケル政権の中では難民対策をめぐって不協和音が強まってきた。キリスト教社会同盟(CSU)は、多数の難民が到着するバイエルン州の政権党だ。同党はメルケル首相が率いるキリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党で、同政権の連立パートナーでもある。
このCSUが、メルケルの難民受け入れ決定について、対決姿勢を強めている。同党のホルスト・ゼーホーファー党首は、9月11日に「メルケル首相が、ドイツにシリアなどの難民を事前のチェックなしに、ドイツに受け入れることを決めたことは、誤りだった。この過ちは、ドイツにとって長期的な影響を及ぼすだろう」と公言し、メルケルを批判した。姉妹政党の党首が、これほどはっきりと首相を批判したのは、極めて珍しい。

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筆者

熊谷徹

熊谷徹(くまがい・とおる) 在独ジャーナリスト

1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「なぜメルケルは『転向』したのか・ドイツ原子力40年戦争の真実」、「ドイツ中興の祖・ゲアハルト・シュレーダー」(日経BP)、「脱原発を決めたドイツの挑戦」(角川SSC新書)など多数。「ドイツは過去とどう向き合ってきたか」(高文研)で2007年度平和・協同ジャーナリズム奨励賞受賞。
WebSite:http://www.tkumagai.de
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