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 これから時々、このコラムに執筆することになりました。僕は「穏健保守」の立場ですので安全保障や外交問題については朝日新聞の論調とは異なりますが、それでもこの場を与えてくれた朝日新聞に感謝します。

 9月18日に安保関連法が成立しました。与党は「なにがなんでも成立させる!」、野党は「なにがなんでも潰す!」、と国会で審議する前から決め込んでいる。そうであれば、あのようなガチンコ対決にしかならないことが最初から決まっている。悲しいことです。

参院特別委での安全保障関連法案の採決を巡り、もみ合う与野党の議員ら。中央奥は見守る安倍首相拡大参院特別委での安全保障関連法案の採決を巡り、もみ合う与野党の議員ら。中央奥は見守る安倍首相

 自民、公明など5党が賛成しての成立ですが、多くの人々がなお反対しており、政府として決して喜べる事態ではありません。反対する人がこれだけ多いのは、政府がわかりやすい説明をしてこなかったせいでもありますから、政府には、これから国民に改めて説明を尽くしていく義務があります。そうでなければ、与党、特に自民党は選挙で国民に見放されるでしょう。

 僕自身は、この法律に賛成です。理由は簡単です。日本の安全保障の体制が柔軟なものになり、国民の生命と財産を守るために、危険に応じた対応策がとれるようになるからです。

1 「72年政府見解」には違反しているが、憲法には違反していない

 もちろん憲法違反の法律は無効です。僕はこの法律は、「72年政府見解」には違反しているが、憲法には違反していないと考えます。

 この法律の違憲・合憲論議の混乱のもとは、1972年の「政府見解」にあります。内閣法制局が作ったこの見解は、国家が自衛する権利を「個別的自衛権」と「集団的自衛権」に分け、個別的自衛権を「日本国土に対して攻撃が行われた時のみ反撃できる権利」と極めて狭く解釈したうえ、それ以外は全てが集団的自衛行為であると区分けし、しかも「集団的自衛権とは他国を守るための武力行使」と定義しました。

 つまり、日本が直接武力攻撃を受けるという、現実には考えにくい極端な場合の武力行使以外は、全てが「他国を守る行為」と定義したのです。海外で多数の日本人が他の国の人々と一緒に危険に陥る事態などは全く想定していません。国の安全保障というものを単純化しすぎた解釈だったと思います。

 乱暴な表現をすれば、集団的自衛権には、日本にとっての「良い集団的自衛権」と「悪い集団的自衛権」があると思うのです。「良い集団的自衛権」とは、日本を他国の軍隊の協力を得て一緒に守るための武力行使です。いまの国際情勢の下では、日本一国では世界中に広がる日本人の生命と財産を守りきることはできません。あとで具体的な例で説明します。

 一方、「悪い集団的自衛権」とは、日本防衛とは関係のない、他国を守るための武力行使です。これは違憲で、ダメです。今回、限定的に可能になるのは、もちろん前者です。憲法13条は、政府が国民の生命と自由を守ることを義務づけています。

 ところが多くの憲法学者は、海外で日本人の生命や財産が攻撃されていても、「日本への武力行使の着手がない段階での武力行使は(個別的自衛権の行使としても)違憲だ」という考えです。つまり、日本の国土が攻撃されていない限り、日本人の命を守るためでも、海外で自衛隊が武力を使うことはダメだと。僕は納得がいきません。

 海外で日本人の生命や財産を外国軍隊と一緒に防衛できるようにする今回の安保法制は、「72年見解が解釈した憲法」には違反すると思います。しかし、この解釈自体が間違っていたのではないでしょうか? 

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筆者

岡本行夫

岡本行夫(おかもと・ゆきお) 外交評論家、MIT(マサチューセッツ工科大学)シニアフェロー

1945年、神奈川県出身。68年一橋大学経済学部卒、外務省入省。91年退官。同年、岡本アソシエイツ設立、代表取締役就任現在に至る。橋本内閣で96年-98年総理大臣補佐官(沖縄担当)、小泉内閣で01年9月より内閣官房参与、03年4月より04年3月まで総理大臣補佐官(イラク問題担当)を歴任。立命館大学客員教授。東北大学特任教授。東北漁業再開支援基金・希望の烽火代表理事。

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