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4 反対論の致命的な欠陥 ― 三つのシワ寄せを放置するのですか?

 僕が反対派の人々に問いたいのは、この法案をつぶして「メデタシメデタシの状態になるのか?」ということです。自衛隊は日本人の生命と財産と幸福を守るための組織です。隊員の能力は高く、使命感にあふれ、身を守るための装備を有し、訓練されている部隊です。この部隊をこれまでは活用できなかったために、他の人々や国の財政に大きな負担が不当にシワ寄せされてきたという事実を、どう考えているのでしょうか。

 これに対しても、反対派の人々は何も答えてくれません。

 三つの不当なシワ寄せについて書きます。

 (1)第一のシワ寄せ ― 丸腰の公務員と民間人がリスクを負っている

 日本では、自衛隊が出られないため、丸腰の公務員や民間人が海外の危機の最前線に立たされています。イラクでテロリストに殺された奥克彦大使は、僕のかけがえのない友人でありパートナーでした。

イラクへ続くクウェートの幹線道路で走行訓練する陸上自衛隊の車列=2004年2月拡大イラクへ続くクウェートの幹線道路で走行訓練する陸上自衛隊の車列=2004年2月

 カンボジアでは国連ボランティアの中田厚仁さんがゲリラに殺されました。中田さんは輝く目をした青年で、僕に、「日本政府が動かないので私が代わりに来ているのです」と、カンボジアで言っていました。

 アフガニスタンでもペシャワル会の伊藤さんが襲われて亡くなりました。アフガニスタンに働く各国の援助関係者や民間人専門家は、PRTという制度のもとでそれぞれの本国の部隊の警護を受けていましたが、日本からは自衛隊や警察などの実力部隊が来ることはありませんでした。

 自衛隊が出られないために日本の公務員や民間人がリスクを負担し、犠牲になっている。この状態のままでいればメデタシメデタシなのでしょうか?

 反対論を主導する有名な憲法学者が「外務官僚には全員自衛隊入隊を義務づけて危険地域を体験させよ」とマスコミで主張していました。そうすれば自衛隊を危険地域に送る法律を作ることなどできなくなるだろうと。

 現実を全く知らない議論だな、と思いました。実際には、自衛隊ではなく丸腰の公務員が危険地域に派遣されているのです。それなら、「世界中の嘲笑を浴びてでも危険地域にある日本の大使館は全て撤収しろ」と主張しなければ辻褄があいません。

 僕は、2カ月前にイラクのバクダッドにある日本大使館を訪れました。24名の外交官が大使館に泊まり込み、インスタント食品で懸命に頑張っていました。2名の大使館員が殺されましたが、ひるむことなく、イラクの復興と日本のプレゼンスのためにとどまっているのです。「危険地域」ですから、自衛隊は一人も派遣されていません。

 自衛隊の中から1名の犠牲者も出さないような備えをするのは当然のことですが、敢えて言いますが、公務員にリスクはつきものなのです。

 勇敢な消防士を見てください。火の中に飛び込むという過酷な職業ですから、毎年6、7名の殉職者が出ています。多くの消防士が殉職しているのに、「消防士は火災現場に近づくな」と言う人はいません。同じ公務員なのに、どうしてですか?

 僕は小泉内閣のもとで、防弾チョッキをつけて奥大使と一緒にイラク復興のために走り回ってきました。1回目にご紹介した宮家さんは、内戦が続くなかイラクに駐在してきました。僕も宮家さんもリスクの中で仕事をしてきました。公務員は、覚悟と使命感をもって任務を遂行しているのです。ですから、「自衛隊員を危険地域に近づけるな」という議論は、強い使命感を持っている自衛隊員に失礼だと思うのです。

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筆者

岡本行夫

岡本行夫(おかもと・ゆきお) 外交評論家、MIT(マサチューセッツ工科大学)シニアフェロー

1945年、神奈川県出身。68年一橋大学経済学部卒、外務省入省。91年退官。同年、岡本アソシエイツ設立、代表取締役就任現在に至る。橋本内閣で96年-98年総理大臣補佐官(沖縄担当)、小泉内閣で01年9月より内閣官房参与、03年4月より04年3月まで総理大臣補佐官(イラク問題担当)を歴任。立命館大学客員教授。東北大学特任教授。東北漁業再開支援基金・希望の烽火代表理事。

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