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陸自が導入した輸送防護車は使えない

机上の空論では済まない邦人救出の現場

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 陸上自衛隊は平成28年度予算で、輸送防護車4輛を9億円で調達する。陸自は平成25年度の補正予算で、オーストラリアのタレス・オーストラリア社製の4×4耐地雷装甲車である「ブッシュマスター輸送防護車」4輛を7億円で導入、中央即応連隊(宇都宮)に配備している。新規調達の4輛も同連隊に配備される予定だ。

 ブッシュマスターはオーストラリア陸軍向けに開発された大型の4輪装甲車で、戦闘重量は14トン、耐地雷構造を有しており、路上最大速度は時速100キロである。乗員は車長、操縦手の他、下車歩兵が8名搭乗できる。

 ブッシュマスターのルーフ内側には日光の熱による車内温度の低減のために耐熱素材が貼られており、クーラーも完備している。飲料水タンクも搭載し、常に冷たい水が飲めるのも利点だ。砂漠などの環境ではこのような装備は大変に便利である。

ブッシュマスター拡大ブッシュマスター=筆者提供
ブッシュマスターの輸送型拡大ブッシュマスターの輸送型=筆者提供

 筆者はブッシュマスターを何度も取材し、英国の軍用車テストコースで試乗したこともあるが優秀な耐地雷装甲車である。4輪で大きなタイヤを使用しているので、不整地においても相応の踏破能力があるが、さすがに6輪あるいは8輪装甲車に比べて乗り心地は悪い。

 ブッシュマスターはオーストラリア以外にオランダ、英国なども採用しているが、このブッシュマスター=輸送防護車だけを導入しても邦人救出作戦は実行できない。無理をすれば多大な犠牲を出して失敗する。

子供や病人の輸送をどうするのか

 輸送防護車は邦人保護に関する法改正に伴い、邦人救護輸送に関して車輛が使用可能となったために調達されたものだ。だが前回の調達分と、今回要求分の輸送防護車はすべてAPC(装甲兵員輸送車)型である。回収車や輸送型、野戦救急車型は調達されていない。

 耐地雷装甲車でも触雷やIED(即席爆発装置)の被害を受ければ無傷では済まない。 ・・・続きを読む
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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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