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集団的自衛権拡大で起きる国内テロのリスク(上)

中東や北朝鮮との「戦闘状態」が意味するもの

金恵京 日本大学危機管理学部准教授(国際法)

現代の戦争と一般市民の危機

 この1年ほどの間、日本では集団的自衛権に注目が集まり続けた。特に、6月4日の衆議院憲法審査会において各党から推薦された3人の憲法学者から「違憲」との意見が示されたことで、少なくとも憲法を国の最高法規と位置づけようとする者にとって、一連の安保法制は再検討を要するとの認識が強まることとなった。

 結果的に、いわゆる安保法案(「国際平和支援法案」と「平和安全法制整備法案」の総称)は圧倒的多数の憲法学者からの反発を受けつつも、強行採決や議場での混乱を経て2015年9月19日未明に参議院本会議にて可決された。

英ロンドン同時爆破テロ/9日、ロンドンのキングズクロス駅には、行方不明者を捜すためのポスターが張られ、多くの花束が置かれていた拡大2005年7月、爆破テロが起こったロンドンのキングズクロス駅
 しかし、法そのものはもちろん、政府、派兵される自衛隊に対して各種の正当性が今後も問われ続けることとなろう。

 確かに、集団的自衛権は国際法上認められた権利であるものの、憲法に違反する法律が存在しまっては国の法制そのものが基礎から崩れてしまう。

 そうした安保法制に関する憲法や国内法の論議に関しては、それぞれの分野の専門家が積極的に情報を発信しているため、ここでは詳述しない。

 ただ、これまでなされて来た安保法制の議論の中で、リスクの問題が語られる際の視点の狭さが、私には非常に気にかかる。

 国会での論戦が本格化してから、注視されてきたのは主として自衛隊員のリスクであった。自衛権の範囲を拡大すれば、当然のように彼らのリスクは増える。

 もちろん、それに関する議論は欠かせないところではあるが、テロについて研究を続けてきた筆者からすると、自衛権を拡大することによって起きる国民全体へのテロのリスクも検討されなければならないと感じている。

中東地域への派兵とテロとの連関

 まず近年の集団的自衛権とテロとの関連を、事例を通じて検討したい。 ・・・続きを読む
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筆者

金恵京

金恵京(きむ・へぎょん) 日本大学危機管理学部准教授(国際法)

国際法学者。日本大学危機管理学部准教授、早稲田大学博士(国際関係学専攻)。1975年ソウル生まれ。幼い頃より日本への関心が強く、1996年に明治大学法学部入学。2000年に卒業後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程に入学、博士後期課程で国際法によるテロリズム規制を研究。2005年、アメリカに渡り、ローファームMorrison & Foester勤務を経て、ジョージ・ワシントン大学総合科学部専任講師、ハワイ大学東アジア学部客員教授を歴任。2012年より日本に戻り、明治大学法学部助教、日本大学総合科学研究所准教授を経て現在に至る。著書に、『テロ防止策の研究――国際法の現状及び将来への提言』(早稲田大学出版部、2011)、『涙と花札――韓流と日流のあいだで』(新潮社、2012)、『風に舞う一葉――身近な日韓友好のすすめ』(第三文明社、2015)、『柔らかな海峡――日本・韓国 和解への道』(集英社インターナショナル、2015)、最新刊に『無差別テロ――国際社会はどう対処すればよいか』(岩波書店、2016)。

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