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 米国はイラク戦争での勝利の後、2003年11月に中東の民主化を求める新中東政策を打ち出した。

 ブッシュ大統領が「米国は中東での自由化戦略に向けた新しい政策を始める」と宣言したのである。

 「欧米が中東における自由の欠如を許し、受け入れてきた60年間は、何ら我々を安全にしてはいない。なぜなら、長期的に見れば、安定は自由を代償にしてはあがなえないものだからだ。中東が自由の栄えない場所であるかぎり、そこは沈滞と、恨みと、暴力を輸出する場所であり続ける。武器の拡散によって、我が国や我が友邦に破滅的な損害を与えることも可能であり、中東の現状のままを受け入れることは無謀なことである」

米国による中東民主化の要求の下で議会選挙に参加したムスリム同胞団の選挙運動=2005年10月、撮影・筆者拡大エジプト議会選挙に参加したムスリム同胞団の選挙運動=2005年10月、撮影・筆者
 米国は中東情勢に大きな影響力を持つ。

 米国が中東をどのように見て、どのように働きかけようとしているかを読むことは、中東情勢を読むうえで重要である。

 ブッシュ演説によれば、9・11事件が起きたのは、アラブ世界に自由も民主主義もなく、沈滞と恨みが渦巻く状況になっていて、「暴力を輸出する場所になっている」ためだ、ということになる。

 これは「自由と民主主義の国」米国の理想を掲げたと見えるかもしれないが、当時の米国には理想を掲げるような余裕はない。

 9・11事件の再発を防ぎ、米国がテロの標的となる脅威を取り除くのに必死にならざるを得えなかったのだ。

反米になった「アフガン帰り」

 では、なぜ、中東民主化なのか。 ・・・続きを読む
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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、最新刊に『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)。

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