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慰安婦問題の合意、日韓は「反発」を乗り越えよ

画期的な決断を未来に生かすために

金恵京 日本大学危機管理学部准教授(国際法)

 2015年11月に3年半ぶりの日韓首脳会談が行われた際、年内の従軍慰安婦問題の妥結について、首脳同士の話し合いが進んだと伝えられた。

韓国・朴槿恵大統領(右)を表敬訪問し、握手する岸田文雄外相=28日午後4時28分、ソウルの大統領府拡大韓国の朴槿恵大統領(右)を表敬訪問した岸田文雄外相=2015年12月28日、ソウルの大統領府
 しかしながら、その後の交渉は水面下で行われたこともあって、動向を正確に捉えていたのは政権中枢の限られた人だけであった。

 そうした中で、12月28日にソウルの韓国・外交部(外務省に当たる)にて岸田文雄外務大臣と尹炳世外交部長官との会談は行われたのである。

 その会談において決定されたのは、(1)慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認した点、(2)安倍晋三首相が「心からのおわびと反省」を表明する点、(3)元慰安婦を支援する財団を韓国政府が設立し、そこに日本政府が10億円を拠出し、同基金が両政府により運営される点、(4)日本大使館前の少女像の移転に対して韓国政府が努力する点であった。

 そして、両外相がそれらを表明した後、電話による首脳会談も13分ほど行われた。

 その当日のうちに安倍首相も、朴槿恵大統領も国民に向けてメッセージを発した事実によって、これが首脳同士の合意でもあることが明確になった。また、そうした対応を受けて、日韓両国だけでなく、アメリカをはじめ世界各国で合意を高く評価する論調が伝えられた。

 そして、何より重要なのは、日韓両国のメディアが合意を肯定的に捉えていたことである。これまで本サイトで度々述べてきたように、両首脳は一部の目立った主張を重視し、世論の多数派の意見を十分にくみ取って来なかったものの、今回の行動で、どちらが広い支持を得るかを実感したことは間違いない。

発想を転換した日韓首脳

 慰安婦問題で日韓がとるべき方針について、私は近著『柔らかな海峡――日本・韓国 和解への道』にて「両国が『自らの希望と限界を明示すること』、および『国内の調整を行うこと』という2点を実行しなければ、これまでと同じ事態が繰り返されてしまう」(同書99ページ)と述べたが、両首脳は時間を要する国内調整を後回しにし、実行可能な方針を打ち出した。

 そうした状況を受けて、本稿では今回の決定に対する評価や、今後の展望、及び指導者にとって何が必要とされているのかを明らかにしていく。 ・・・続きを読む
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筆者

金恵京

金恵京(きむ・へぎょん) 日本大学危機管理学部准教授(国際法)

国際法学者。日本大学危機管理学部准教授、早稲田大学博士(国際関係学専攻)。1975年ソウル生まれ。幼い頃より日本への関心が強く、1996年に明治大学法学部入学。2000年に卒業後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程に入学、博士後期課程で国際法によるテロリズム規制を研究。2005年、アメリカに渡り、ローファームMorrison & Foester勤務を経て、ジョージ・ワシントン大学総合科学部専任講師、ハワイ大学東アジア学部客員教授を歴任。2012年より日本に戻り、明治大学法学部助教、日本大学総合科学研究所准教授を経て現在に至る。著書に、『テロ防止策の研究――国際法の現状及び将来への提言』(早稲田大学出版部、2011)、『涙と花札――韓流と日流のあいだで』(新潮社、2012)、『風に舞う一葉――身近な日韓友好のすすめ』(第三文明社、2015)、『柔らかな海峡――日本・韓国 和解への道』(集英社インターナショナル、2015)、最新刊に『無差別テロ――国際社会はどう対処すればよいか』(岩波書店、2016)。

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