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[4]政治は生き物 育てていこう

誰も私の自由は奪えない。社会は簡単には変わらないけど、希望を持とう

松本一弥

「民主主義をつくる」は、①巻頭論文+②「自由って何だ? SEALDsとの対話」(4回)+③五百旗頭真・熊本県立大理事長インタビュー(3回)の三つで構成しています。
◆SEALDsからの出席者 千葉泰真(ちば・やすまさ)/元山仁士郎(もとやま・じんしろう)/今村幸子(いまむら・さちこ)/是恒香琳(これつね・かりん)/安部さくら(あべ・さくら)/大高 優歩(おおたか・ゆうほ)山本雅昭(やまもと・まさあき)

◆齋藤純一/早稲田大学政経学部教授(政治理論・政治思想史専攻)

◆司会 松本一弥/朝日新聞WEBRONZA編集長(末尾に参加者の略歴を掲載)

 議会制民主主義に足りない点を補完する

齋藤純一教授と語り合うSEALDsのメンバー拡大齋藤純一教授と語り合うSEALDsのメンバー

松本 最後に、「デモと議会制民主主義」について話したいと思います。

元山 日本は議会制民主主義の制度をとっていますよね。それ自体はまったく否定しないですが、議会というものは、必ず欠けているところがあるので、そこを自分たちも参加して、声を上げていくことで埋めていきたいなと思っています。声をあげる、ということは憲法でも認められていることなので、声を上げることで、議会に足りていないところを埋め合わせていきたいんです。

 議会と個人って、お互いに共依存的というか、補完的なところがあるんじゃないのかな。今まで日本では、議会がとても強かったし、僕たちはお任せしたきりだった。でも、3・11以降から、参加型というか、市民が直接声をあげて議会に反映させるっていうことが盛んになってきたと思うし、それをSEALDsが盛り上げているという側面もあると思うんです。また、これは日本だけじゃなくて、世界各国でやるべきことなので、それを自分たちも受け継いで、次の世代に引き渡していきたいなと。

今村幸子さん拡大今村幸子さん

今村 私は、民主主義って、議会制だけでは足りなくて、議会を補完する役割がデモにあると思っています。民主主義のなかで、選挙以外に市民が政治にかかわっていくあり方として、デモがある。それだけじゃなく、選挙に対しても効果があると思っています。

 たとえば、次の選挙までに街中でのデモをやって、世論を喚起することで「こういう問題があるんだ」と気づく人がいるかもしれない。

 世論を可視化して、それをメディアが取り上げることで、もしかしたら次の選挙で、今まで少数だった声が多数になっていって、それが選挙結果に反映されるという可能性もあると思うし。安保法制だけの問題だけじゃなく、デモというのは議会制民主主義にとっても、大事なひとつの表現じゃないかなと思っています。

小選挙区制では補えない民意を反映させる

元山仁士郎さん(左)と千葉泰真さん拡大元山仁士郎さん(左)と千葉泰真さん

千葉 まったく一緒です。民主主義は未完のプロジェクトだ、といわれますよね。投票行動、選挙こそ民主主義だということに対する批判も浴びせられているんですけども、投票行動というものも、特に議会制民主主義において大きなウェートを占めることは間違いないと思うんです。

 でも、それだけじゃ100%ではない。特に一つ前の選挙を見てみると、得票率にしたら、わずか25%前後の自由民主党が、議席数にかんしては7割以上を占めるような小選挙区制の問題点がある。投票していない人がいるにしても、75%の民意は選挙結果に反映されていないわけです。

 やはり、そういった民意の欠如を補う方法として、デモだったり、ウェブでの動画配信による世論喚起であったりっていうのも、一つの政治参加の方法だと思っています。特に昨年の夏は、デモという政治参加の仕方もあるんだなっていうのが社会に大きく認められたと思う。

 あとは、こんど立ち上がった「ReDEMOS(リデモス)」というシンクタンクにしても、そういった市民側の知のプラットフォームを提供するという点で、政治参加のひとつなのかなと。投票だけでは完成しえない議会制民主主義を補完する、たくさんあるなかのひとつになるんじゃないかなと僕は思っています。

自由であり続けるために

安部さくらさん(右)、今村幸子さん(真ん中)、是恒香琳さん拡大安部さくらさん(右)、今村幸子さん(真ん中)、是恒香琳さん

安部 もう、ほとんど言われちゃった(笑)。私、社会はそう簡単に変わらないと思っているんですが、だからといって絶対変わらないことはないとも思っていて。自分が選挙に行けるようになってまだ1年目で、まだ2回しか行ったことがないけど、選挙に行くだけで社会に参加したという気持ちになれるし、自分の行動が何かを動かすかもしれないと思えたりすることは、すごく希望なんですよね。

 議会制民主主義が、すべてを代弁していない、誰かに頼っているだけでは変わらないと思うようになりました。だから、自分にできることをやろうと思う。

 自分の行動が何かにつながっていると思えるようになったから、それだけで私は希望が持てる。社会はそう簡単に変わらないし、変えるためには、地道で面倒くさいことをずっと続けていかなくちゃいけないわけだけど、それをやらなくなったら、もっとつまらない人生だなって私は思う。

 だから、いま、SEALDsの活動をやっていて後悔もないし、もっとおもしろくなるだろう、自分でおもしろくできるだろう、って感じています。世の中の状況はすごく絶望的だけど、やめたらもっと不自由になる。自分は自由なんだと自分で思っている限り、誰も私から自由を奪えないのかな、と。そう思いながらやっています。

政治は生きている

是恒香琳さん(右)と千葉泰真さん拡大是恒香琳さん(右)と千葉泰真さん

是恒 昨年の夏を見ていて思ったんですけど、政治って、生ものっていうか、生きている。だから、みんなで育てていかないといけないわけで。

 たとえば、この候補者はきっといい働きをしてくれると思って選挙で選ぶとするじゃないですか。でも、選んでそのあと放置すれば、みんなが思っていたような政治家になってくれるかというと、そうではない。

 やっぱり政治って、ああでもないこうでもないと意見を交換しながら、みんなで少しずつ育てていくものだと思うんですよね。そのへんの感覚が、あまりにも私たちにないな、と思って。

 みんな、選挙で選んで終わりで、それで自分の思った通りの政治をしてくれると思っているのかもしれないけど、政治って、そんなに無機質なものじゃないから、生きものに対するのと同じように、かかわり続けていくことが大事。その一つの方法が、私はデモだと思う。いろんな関わり方があるべきだと思うんです。デモも占拠もそれ以外も、どの方法も否定するわけではない。全部が大事ってことです。

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筆者

松本一弥

松本一弥(まつもと・かずや) 朝日新聞WEBRONZA編集長

1959年生まれ。早稲田大学法学部卒。朝日新聞入社後は東京社会部で事件や調査報道を担当した後、月刊「論座」副編集長、オピニオン編集グループ次長、月刊「Journalism」編集長などを経て現職。満州事変から敗戦を経て占領期までのメディアの戦争責任を、朝日新聞を中心に徹底検証した年間プロジェクト「新聞と戦争」では総括デスクを務めた。著書に『55人が語るイラク戦争ー9.11後の世界を生きる』(岩波書店)、共著に『新聞と戦争』(上・下、朝日文庫)。

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