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[2]韓国の教育現場は今――従軍慰安婦問題

伊東順子 フリーライター・翻訳業

「いじめはあるか?」

 前回、韓国の学校に通う日本人の子供について書いた。

ソウルの旧日本大使館前に設置された慰安婦問題を象徴する「少女像」ソウルの日本大使館そばに設置された慰安婦の少女像
 作文の時間に「日本のお友達に<独島は韓国領土だ>ということを説明する手紙を書いてみましょう」と言われた小6女子、授業中に出てきた「悪い日本人」の名前が母親と同じ名字だったという中3男子の話。

 こういう話を紹介すると、「反日教育」とか「いじめ」という言葉を思い浮かべる人もいるかもしれない。

 ただ、これはそういう話ではない。

 日韓で政治主張や歴史認識が対立するテーマに直面した時、実際の教育現場で日本人の子供と韓国人教師やクラスメートが、さてどうしたものかと工夫しながら学校生活を送っているという事例だった。

 編集部からは「韓国の学校で日本の子供はいじめられているのか」というタイトルの提案をうけたが、それはお断りした。

 そもそも「いじめ」の定義は難しく、専門家だっておいそれと書ける話ではない。

 私が知っている限り、ニュースになるような「いじめ事件」は発覚していないし、周囲の日本人父兄から深刻な例を聞いたことはない。

 でも、子供が親に気を遣って学校のことを言わないこともあるかもしれない。だから、「大丈夫ですよ~」と言ってしまうこともできない。

 ちなみに私自身が実際に知っていることとしては、過去にこういうことがあった。

 震災の時の話である。韓国内でも多くのところで、被災地のためのチャリティーやバザーが行われたのだが、タイミングが悪いことに、日本の教科書検定での「竹島表記」が報じられた。

 韓国世論は少しギクシャクし、それを受けて韓国国内のあるインターナショナルスクールで、学校に設置された義援金の箱を見ながら、韓国系生徒が日本人同級生に向かって、こんな発言をしたという。

 「日本人は地震の被害者として世界から同情されようとしているが、過去には韓国を侵略し独島を占領したではないか」

 日本人生徒はこれを親に訴え、親は学校に抗議をした。

 こういう時に米国系の学校の対応は素早い。校長と学校カウンセラーはすぐに双方の学生を呼び事情を聞き、さらに親を交えて話し合いの場をもうけた。

 多くの喧嘩と同じく、子供同士はすぐに「仲直り」したが、日本人の親には「なんで国と国の問題を、子供の世界に持ち込むのか」という不満も残った。

 一方で、子供の頃から国際関係を学ぶ機会は重要と、学校側の迅速な対応を賞賛する親もいた。

 「さすが『インター』ですね。ただ、これが韓国の学校だったら、どうだったでしょう? 先生はこんなにフェアに対応してくれたでしょうか」

 さて、どうだろう?

教科書の中の「従軍慰安婦問題」

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