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[6] 参院選に向け説得力のある形で野党共闘を

リベラル勢力と左派政党はきちんと手を組めるのか

中野晃一 上智大学国際教養学部教授・政治学(日本政治、比較政治、政治思想)

注)この立憲デモクラシー講座の原稿は、1月8日に早稲田大学で行われたものをベースに、講演者が加筆修正したものです。

立憲デモクラシーの会ホームページ

http://constitutionaldemocracyjapan.tumblr.com/

 

講演する中野晃一教授拡大講演する中野晃一教授

~質疑応答~

Q:もうすぐ62歳でいま無職です。二つちょっと伺いたいんですが、一つは事実確認なんですが、SEALDsの方々が出てきて、我々、中高年世代がですね、非常にうれしく思ったんですけれど、実際に大学の教員として勤めておられて、日頃、学生さんを見ておられて、まあ統計的にどっちが多いという質問ではありませんけれども、SEALDsの行為に対して肯定的な学生さんと、否定的な学生さん、実際には大学ではどうなんでしょうか? これが一つ目です。

 二つ目は、いま私あえて62歳と申し上げたのは、今日ここに来ておられる方、今日は少し若い方がいらっしゃいますけど、いつもは60代、70代ばかりなんですね。これは二つ意味があって、定年退職で時間がたっぷりあるということと、おそらく70年安保とか60年安保を知っている世代であって、我慢できないというふうに立ち上がった、まあ私もその中の一人ですけれど、そういった方が多いんじゃないかと思いますけど。実際に40代、50代、私自身もはっきり言って、何もやっていませんでした。その忸怩たる思いがあっていまここにいるわけですが、いまの、この時点での30代、40代、50代の方々の動きに対して、「いえ、あの人たちも頑張ってやっておられるよ」というふう思っておられるのか、あるいは「やっぱりダメだね」と思っておられるのか、どうすりゃいいかと、そのあたりのお考えを伺わせていただきます。

立ち上がった人たちは勇気がある

中野:ありがとうございます。非常に重要な質問で。あの、私45歳です。ただやっぱりそんなにいないですよ。おっしゃる通りで。いろんな運動体、運動体に限らず日弁連もそうだと思いますけれども、学者のほうもそうだし、いろんなところで「いまだからできた」ってやっぱり思うんです。それは60代、70代の方たちがいるからです。でないと、できない。これ、でもいまできたから、次につながる可能性がいまあるのでよかったっていう話なんですよ。もしいきなりこういったことが10年後とかに起きて、何十年後に起きて、皆さん同じように元気でなかったら、たぶんかなり悲しいことになっていたと思うんですね。だから要は私の世代が定年退職していても、たぶん同じようには動いてないと思うので、難しいと思うんです。

 だからいまのタイミングでできたというのはよかったし、年齢構成でいうと、60代、70代の方たちがかなり大きな力になった。それは経験もあれば、知識もあるし、あとまあお金もね、いろいろですけれども、リタイアできていれば、もちろんそれなりにいい場合もありますから、そういうこともあって、時間もある場合があるということで、あとは孫の心配だとか、そういったところから動くようになった。いままで別に特にやっていなかったけどという方もたくさんお会いしているので、おそらくそういうことなんだと思うんですね。

 それに対して、やっぱり40代、50代というのは、特に男性ですけれども、いわゆる働き盛りということになりますから、まあ基本的に本当に日経新聞をななめ読みしてるぐらいで、テレビさえろくに見ていなくて、ましてやIWJ(Indepentend Web Journalインターネット報道メディア)だとか何ですか、ツイッターとか何とかなんていうのは全然あれですから、全くいま何が起きているかというのはよくわかっていないという人は、私の同世代の元同級生みたいなのを含めて、圧倒的に多いと思いますね。で、まあもともと発想としてそういう運動がどうこうっていうことに対して、嫌悪感というか、違和感が強い人が多いと思いますから、たんなる忙しいっていうだけじゃなくって、ハードルが高いというのは非常にあると思うんです。

講演する中野晃一教授拡大講演する中野晃一教授
 ただ今日もお見えですけれども、ママの会の女性などは40代、50代の方とか、30代の方でも活躍されている方はたくさんいると思いますね。男性に比べて。それはそれで、まあもちろん男性も入ったほうがいいわけですけど、ポジティブな非常にいいことだと思います。

 SEALDsに関して、学生としてどうかと言って、まあ先ほど奥田くんに関して、普通の学生みたいな言い方するときもあるんですけど、ある意味普通の学生なんですよ。何かよく遅刻するだの何だのとかって、新聞とかいろいろなとこでね、記事が出るたびに「奥田は遅刻してきた」みたいに書かれててね(笑)。だけど、傑出した若者たちですよ。SEALDsは私もだからここのところに来て、つき合いが出てきて、前よりよく知るようになりましたが、すごいと思いますよ。本当に。だから「どこにでもいる若者です」というのは本当ではないです。そんなことは全然ないです。

 じゃあ例えばだから偏差値がずば抜けて高いかと言ったら、まあ早稲田の学生もいるんだと思うんですけど、そんな目立たないですよね。「早慶、東大、京大どこ行ったー」みたいな感じでよく言っているんですけど。ちゃんとした立派な大学ですよ、皆さん。だけれどもそういう問題じゃないですね。やっぱり偏差値エリートじゃないんだと思うんですよ。

 偏差値エリートって、要は間違いがない人が一番上まで行きますから。おもしろいことを考えたり、自分の頭で考える人じゃなくて、正解を書き続けて、不正解を避けることができる人が東大へ行きますから。だってそうじゃないですか。そういう採点方式だから。だから彼らが正解を今回も見つけて、それは冷笑することなんですよね。自分の就職に問題が起きないように、人に任せといて、自分は「いや、よくないと思うけど、ああやって声を上げるのもどうかな」みたいな、そんな連中ばっかりなわけですよ。はっきり言って。

 だから若者の中でも、感性があるし、知性があるし、何よりも勇気がある。今回立ち上がった人たちの一番大きな特徴って、やっぱり勇気があるんですよ。一人でも声を上げる。だってママの会のスタンディングとかって、よくやるなあと思いますもん。大変じゃないですか。いや、皆さんにしたってそうだと思いますよ。自分の形の中で声を上げるとか何とかって、やっぱり簡単じゃないんですよ。

 日本みたいな文化の中にいれば余計。若者の中でだって、こんなにコストが高くって、直接の自分の利益にならないことをやるというのはやっぱり気概があるんですよ。それは損得勘定じゃなくって、自分はこれはおかしいと思って、そのときに声を上げる、一線を越える。思わず足が前に出ちゃったっていう、そういうとこなんだと思うんですよね。それがやっぱりつくっていると思うので、学生比率ということで言えば、そんなに高くはないです。

自分たちが教えたかった学生がそこにいる

中野:先ほど学者の会は「はしゃいでいるだけでいい」って言いましたけど、学者の会は完全にはしゃいでいるわけですね。私みたいなのと違って、佐藤学さんとか広渡清吾先生とかみんなそうですけど、東大みたいなね、名門国立大学のみたいなのを退官されて、第2の職場の私立に移られた先生って、結構主力をなしてるわけですよ。だからよく「SEALDsは偏差値28」とかってバカなことを言っている右翼とかいるわけですけどね。「あいつら賢くないからやっているんだ」みたいなことを書く。だったら何でこんなに、ものすごい日本の頭脳みたいな人たちが一緒にやっているんだって思わないのかなって思うんですけど。びっくりするぐらい、日本学術会議が来ちゃったよ、みたいな人たちばっかり集まってやっているんですよ。

 しかし彼ら、はしゃいでいるんですね。何ではしゃいでいるかって言ったら、自分たちが教えたかった学生がいるんですよ。そこに。国会前に。いままでの、たんなる偏差値エリートじゃなくて。びっくりしますよね。だから、僕もびっくりしますけど、SEALDsだから「サロンをやりたいんですけど」って、「サロンって何?」みたいな感じでこっちに入るんですけど。平たく言えば講演会みたいな感じなんですけどね。要は勉強会なわけですよ。勉強したい、学びたい、もっとわかりたい、それで行動したい。教師冥利に尽きるじゃないですか。

 だからあんなにもう60代の先生ね、それぞれの分野では権威の方たちがはしゃいで喜んじゃって、旗を持っちゃって。損得勘定とかそんな話じゃないわけですね。自分が教えたかった、自分は何のために学問やってきたかって、それはだってやっぱり自分の人生に生かして、社会をよくするためにやりたいと思っていた。そうしたら若者でどっからか、こんな子たちが出てきちゃったと思っているわけですね。

 それがすごいところなわけですね。だからそれぐらい傑出している特別な若者だというのが、SEALDsに関して言うとあると思うんです。ただその例がいろんな余波はもたらしています。若い子たちですから、SEALDsって言われると「うぜえ」みたいな感じなんですよ。基本的には。だって要はしゃくに障るじゃないですか。いきなり「アエラ」とかに出ちゃったり、何かね、テレビとか出ちゃって、「何だあいつ」みたいな感じになりますよね。それはね、若いから。素直になれるわけないじゃないですか。だから「あいつらバカじゃね?」みたいな感じでね、なるわけですよね。

 だけれども、そういう子ばっかりでもないです。話を聞いていると、何となくけなしたいっていう子たちもいれば、中には「ああ、すごいなあ」って、ちょっとむずむずむずってしている子もいるし。僕の学校にも何人かいるんですけれども、私の教え子なんて言ってくれるとうれしいんですけど、別に教え子でも何でもないんですよ。私、去年1年間研究休暇だったんで、授業をしていなかったんです。上智の学生に初めて国会前で会ったんですよ。「先生!」とかって言われて寄ってこられて、「戻ってこられたら授業を受けます」とかって。いまは授業をしているんですけど、それまでは授業はしていなかったんで、別に私が教えたからああなったとか、全然そう言うんじゃないんです。女子学生なんですけど、その子たちは。何人かいるんですが。

 彼女たちがいたり、彼らがいることによって、ほかの学生も「あっ、こういうのがありなんだ」と。だから同じことできるかって、やらないけど、秋ぐらいになって、「何か日本の人文学とかが、こういうのが、文科省が何か学部を閉鎖するとかのニュースあったんですけど、私たちに何かできないでしょうか?」とかって、いきなり女の子が5人ぐらい来て、びっくりしました。そんなこと、いままで絶対なかったですから。

 やっぱりそういうようなことをもたらしてきているっていうのは、SEALDs効果というのはあるんだと思うんですよね。いわゆる普通の見た目の、だから別に「政治活動やります」みたいなのじゃなくて、ファッションも楽しめば音楽も好きで、かっこよくやりたいねって思っていて、ただその中で学んだり、自分のことだけじゃなくて、社会のことも考えたい、そういう子たちがいる。そういう子たちも楽しそうにやっているというのを見て、自分たちも何かやったほうがいいんじゃないかな。「これ、おかしいと思ってるんだけど」っていうのをちょっとしゃべりやすい空気ができているというのも、やっぱりあると思うので、それは大きなことではないかなというふうに思います。ただ全体的な比率から言うと、決して多数派ということではありません。

Q:ありがとうございます。憲法のすばらしいことが二つあって、9条の戦争「できない」じゃなくて「しない」ですよね。それからもう一つは私たち普通の人に主権をいただいたということで、主権者としてどれだけ責任を果たしているのか。先生のおっしゃったことの結局最後は選挙ですよね。50パーセントしか投票所に行っていない。選挙で勝たなきゃ、選挙で政治家を落とさなきゃいけないと思います。

 伺いたいのは、アメリカが本当に強いかということです。サダム・フセインがブッシュのお父さんの時代に行きましたよね。あれはやっぱりアメリカが彼をして、それをさせたんじゃなければ、アメリカが弱いから彼はやったんだと思いますよね。それからシリアにしたって、アサドを倒そうという人たちをアメリカが助けるんだけれどもうまくいかない。そしてプーチンのほうが何だか目立ってきているということですよね。そしてまたブッシュの息子がイラクでサダムを倒したがために、またスンニとシーアで、ISをつくったのはアメリカみたいなもんですよね、言ってみれば。だから本当に先生がおっしゃるようにアメリカは強いのか、少し伺いたいです。

個人の尊厳の尊重で大同団結する

中野:最初の選挙ということに関して、まさにおっしゃる通りで、我々、主権者だし、最終的には法律をつくったり、変えたりすることができるのは議会ですから、選挙が大事なのは言うまでもないです。ましてや前回の衆議院選挙みたいに52.7%ですか、史上最低の投票率というような、これを大きく変えないとどうにもならないというのはあると思うんですね。ですから市民連合においても、そしてSEALDsのほうも私が理解している範囲ではやっぱり投票率を上げる、それが非常に大きな目標なんです。

 ですから野党共闘というふうに我々が言っているのは、一つには対立構図というのを明確に出して、 ・・・続きを読む
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筆者

中野晃一

中野晃一(なかの・こういち) 上智大学国際教養学部教授・政治学(日本政治、比較政治、政治思想)

東京大学(哲学)および英国オックスフォード大学(哲学・政治学)の両校を卒業ののち、米国プリンストン大学にて政治学の修士号および博士号を取得。主著『右傾化する日本政治』(岩波新書)、『戦後日本の国家保守主義―内務・自治官僚の軌跡』(岩波書店)、共著に『いまこそ民主主義の再生を!新しい政治参加への希望』(岩波ブックレット)、『ヤスクニとむきあう』(めこん)など、日本再建イニシアティブ著『民主党政権失敗の検証 日本政治は何を活かすか』(中公新書)および『「戦後保守」は終わったのか 自民党政治の危機』(角川新書)でプロジェクト座長。

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