2016年05月31日
海外派遣や災害救援など、自衛隊の任務が多様化するなか、隊員のメンタルヘルス対策が促進されている。その一方で、イラクとインド洋への海外派遣から帰国した隊員のうち56名ものひとびとが在職中に自殺していた。
このことをどのように受け止めればいいのだろうか。防衛省がメンタルヘルス対策を充実させてゆくことに、わたしたちは手放しで賛成すべきだろうか。この問題の歴史的な根を探ってゆくと、ベトナム戦争を通って、「ヒロシマ」の記憶にゆきつく。
昨年(2015年)7月、武器使用基準の緩和などを盛り込んだ安全保障関連法案が可決された。この法整備のさらに前年(2014年)には、集団的自衛権の行使を可能とする閣議決定がなされている。
このような状況下、防衛省は自衛隊員のメンタルヘルス対策に取り組んでいる。自衛隊が管轄する病院での精神科診療や、駐屯地へのカウンセラー配置のほか、自衛隊に特徴的な取り組みとして、自殺者が出た部隊へのアフターケアが組織的に行われている。目に見えるケガや内臓の病気だけでなく、「こころ」の問題も重視しようという流れと言えるだろうか。
このメンタルヘルス対策には、おおまかに分けると、三つの目的がある。
(1)災害派遣におけるストレス、たとえば遺体回収による精神的ショックなどへの対策。
(2)PKO(国連平和維持活動)や、アメリカとの同盟関係を軸にした海外展開による、戦地での過酷なストレスへの対策。PTSD(後述)の対策。
(3)全般的な自殺対策。この対策では、自衛隊員の狭義の精神的ストレスだけでなく、いじめや借金苦も自殺の原因として考えられている。
防衛省/自衛隊は、なぜこうしたメンタルヘルス対策に力を入れているのだろうか。
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