メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

 2011年春に内戦が始まったリビアでは、同年10月のカダフィ殺害を経て、2012年7月に選挙が実施され、憲法制定議会が選出された。ここまでは順調に民主化が進んだが、その後、民兵間の抗争が激しくなり、2014年夏以降、政府も分裂し、各地に軍団が割拠する状態となった。武装勢力の対立に政治勢力の対立が結びつき、さらに外国の関与もあった。

 私は2013年11月下旬、民兵問題を取材するためにトリポリに入った。1週間ほど前に「民兵反対」を訴えていた市民のデモに民兵が銃撃して、50人近い市民が死亡する事件が起こっていた。

リビアでは革命後、台頭する民兵の横暴化に抗議する市民の集会=2013年11月拡大リビア革命の後、台頭する民兵の横暴化に抗議する市民の集会=2013年11月
 発端は、11月上旬、トリポリ中心部で民兵組織同士の銃撃戦があり、3人が死亡したことだった。

 市民からは「民兵は首都から出ていけ」と声が上がった。

 トリポリ市評議会議長のサダト・バドリが民兵勢力に退去を求め、市民に「平和的デモ」を呼びかけた。

 15日の金曜日にはイスラム教の礼拝の後、1000人近くの市民が、抗争した民兵の一つであるミスラタの民兵が占拠する高級住宅地のガルグール地区に向けてデモをした。

市民のデモに民兵が銃撃

 ところが、民兵側から銃撃があり、10人ほどが死亡した。その後、市民も武器を持ちだして戦闘となり、翌16日までに市民47人が死亡した。

 ミスラタはトリポリの東200キロにある都市で、ミスラタ民兵は2012年8月の反体制勢力によるトリポリ攻略の際に、同地に迫った武装勢力である。カダフィ体制が崩壊した後も、旧体制の幹部が住んでいた高級住宅地ガルグール地区を占拠していた。

 私は、デモ隊の最前列にいて死んだ退役軍人アブドルザク・バフバキ(53)の自宅を訪ねた。 ・・・続きを読む
(残り:約6139文字/本文:約6846文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、最新刊に『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)。

川上泰徳の新着記事

もっと見る