メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

[2]沖縄の軍人・軍属は日米地位協定で守られる

新垣毅 琉球新報社東京報道部長

事件を起こすのは「個人の資質」か?

 沖縄で、なぜ米軍絡みの事件・事故は繰り返されるのだろうか。米軍人・軍属の「個人の資質」で片付けられるものであろうか。

 1972年に沖縄が日本に復帰してから2015年末までの米軍人・軍属の検挙件数は5896件に上る。殺人・強姦などの凶悪犯だけでも574件ある。

 一方で米軍専用基地のない33府県は例年ほぼゼロに近いに違いない。沖縄に約74%もの専用基地が集中するから、多くの県でゼロで済む犯罪が、沖縄ではこれだけ起きている。

米兵による少女暴行事件で、在沖縄米海兵隊は1995年10月4、5両日を「反省の日」として、訓練の自粛をした。5日には、7つの基地内の体育館などに隊員を集め、日米地位協定や日本の文化、習慣への意識を高めるための講義を行った。写真は、沖縄県北谷町のキャンプ瑞慶覧で講義を受ける海兵隊員たち 1995101995年、米兵による少女暴行事件で、在沖縄米海兵隊は10月4、5両日を「反省の日」として、隊員を集め、日米地位協定や日本文化などの講義を実施したのだが……=沖縄県北谷町のキャンプ瑞慶覧
 95年の少女乱暴事件に抗議して活動を始めた「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」は、新聞や書籍、琉球政府文書、証言などを基に1945年4月以降、米兵による性犯罪を調べ、冊子にまとめた。

 最新の2012年までの67年間で確認できたのは約350件。それでも「氷山の一角」とメンバーは推測する。

 日本復帰前の暴行・暴行未遂のほとんどは加害米兵の処罰の有無が不明で、迷宮入りも多い。

 350件中、発生市町村が確認できた310件のうち、最も多かったのが那覇市の63件、次いで沖縄市55件、うるま市46件、宜野湾市22件などと続く。

 これらの統計から、ある傾向が見えてくる。すなわち、発生地は人口密集地で多く起きているということだ。基地の有無に関係なく米兵が動き回り、事件を起こしている。近年は那覇でも住居侵入や強盗致傷事件などが相次ぐ。事件は、いわば住民と“同居状態”といえる。

 これは、米軍基地の返還に伴う代替基地を、沖縄本島のどこに移設しても、事件という側面から見れば、負担は軽減されないことを意味している。

 女たちの会の高里鈴代共同代表はこう断言する。

 「軍隊がいる限り事件はどこでも起こり得る。基地移設ではなく、軍隊の撤退を要求すべきだ」

 県議会が今回、在沖海兵隊の撤退を求めた意見書を初めて可決した背景には、こうした認識がある。在沖米軍で海兵隊は施設面積の約75%を占める。軍人数の約60%に達するとともに、海兵隊による事件・事故の発生件数も多く、県民の米軍基地負担で大きなウエートを占めてきた。沖縄の基地は、海兵隊の割合が大きいことが特徴だ。

海兵隊の役割

 海兵隊は、戦争や紛争が起こった際の「殴り込み部隊」といわれ、真っ先に戦場に駆け込む役割を担った時代もあった。しかし、近年は空爆でほとんど戦況が決まってしまうため、役割は大きく見直され、最近は不要論も根強い。

 その一方で、海兵隊員は比較的若く、貧困層や有色人種が多いといわれ、そうした層の雇用の場になっている側面もある。米国内における失業者や犯罪の予備群を軍隊で抱え、雇用や犯罪の防止に加え、ナショナリズム(愛国心)も植え付けられる場になっているとの見方もできる。

 その海兵隊は、戦場において「いかに人を殺すか」という訓練を徹底的に受けている。2009年に沖縄で海兵隊員(当時19歳)が起こしたタクシー運転手への強盗致傷事件で、容疑者は海兵隊によるタクシー強盗が多いと聞き「自分で

・・・ログインして読む
(残り:約1284文字/本文:約2644文字)