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[6]男女のバランスで民主主義の質は高まる

市民の知見を総動員して議員の通信簿をつけよう

三浦まり 上智大学法学部教授

注)この立憲デモクラシー講座の原稿は、3月4日に早稲田大学で行われたものをベースに、講演者が加筆修正したものです。

立憲デモクラシーの会ホームページ

http://constitutionaldemocracyjapan.tumblr.com/

三浦まり教授拡大講演する三浦まり教授
~質疑応答~

Q:現行の制度の中で、地方の自治体で女性の首長もおられるし、地方議会にも相対的に女性議員が多いところとかあるかとは思うんです。先生が言われている、「女性議員を本気で増やす」ということの可能性というか、糸口などについて、お話しいただければと。

女性議員のほうがかなりまじめ

三浦:はい。ありがとうございます。先ほど市町村議会の2割は女性ゼロと申し上げましたが、大阪の島本町は男女半々ですし、神奈川の大磯もそうです。地域ごとの格差がとても大きいんですね。女性が多い議会はどういう議会で、どんな変化が生まれたのかという研究がなされています。

 いまのところ言われているのは、日本も、世界に共通しますが、女性議員のほうがどうやら、かなりまじめであると。(会場:笑)。よく勉強して、よく質問していることがわかっています。

 私は先ほど女性が増えると政策が変わると言いましたが、地方だと国政ほどの明確な政策の差はあまり観察されていません。政策というより、細かなところで違いが出てくる。政策は首長によってくるので、必ずしもストレートには女性議員比率が反映していませんが、議会として、質問が増えたり、透明性が高まったり、そういった民主主義の質のレベルでは改善されているといった研究が出ています。

Q:政治家の方が代表者ではなくて、自分の「私はこれをやりたい」というようなことを思って、政治家になる方が多いというお話があったんですけれども、実は子どもたちと仕事をすることが多くて、その中で子どもたち、18歳の選挙権が始まって、政治に対して関心を持っている子も増えていますので、政党名と候補者の名前を伏せた形で、今度の参議院選挙で模擬投票をやってみようかという話が出ています。いまのところマニフェストをもとに、匿名性で「だれがいいと思う?」というような選挙をやってみようかなと考えているんですけども、そのほかに例えばこんな要素を入れて、選挙をするとおもしろいんじゃないかというのがありましたら、教えていただければと思います。

とても重要な政党の名前

三浦:私は政党というのはすごく重要なものだと思っていて、政党ラベルが意味をなさなくなっていることが、今の混迷した状況を生み出していると思っています。どこかの政党は「名前募集中」のようですが、政党の名前はとても重要です。その政党のよって立つ理念を体現する言葉だからです。世界的に見て、政党の名前には大きなバリエーションはありません。自由と、平等を表すところの民主または労働という言葉があり、保守があり、それから国民党みたいな名前があり、共産党があり、みどりがありと、それくらいなわけです。

 現代社会の中で意見が分かれるイデオロギーのバリエーションは無数にあるわけではなく、四つとか五つとか、そのぐらいに大体まとまりながら、大まかな方向性を示しているわけです。このことを政党も私たちも認識する必要があります。

 人間の認識能力は限られていますから、右から左の一次元に政党が並んでいると、私たち、選びやすいんですね。ところが日本の場合、一番良い例は維新ですが、「第三の極」と言われていました。私からしたら一次元の上に位置づけられるのですが、メディア的には「次元が違う政党が出てきた」とされ、有権者は混乱すると思います。

 右とか左とか言うのは古いものだと片付けてしまわないほうがいい。昔ながらの右と左がいいということではなく、一次元に、右から左に政党が並ぶという空間認知能力しか人間は持ちあわせていないからです。せいぜい二次元までですね。

 だから三次元、四次元になるともうわからなくなります。2012年の総選挙や14年の総選挙では10個近い争点が新聞に並んで、TPPとか原発とか経済とか年金とか並べて、政党ごとに○とか×とか書いてありましたが,結局のところ政党の違いがよくわからないですね。これでは民主主義は営めないと思います。人間が認識できる三つから五つ、せいぜい七つぐらいの政党数であり、それぞれの方向性が右から左まで並べられるようにならないと、決められないのだと思うのですね。

三浦まり教授拡大三浦まり教授

左右軸を政治的な言語の中に取り戻す

三浦:実は授業では,最初に右と左の話をしています。というのは、本当に右と左もわからないということがいまの大学生の状況なので、自民党というのはこういう政党で、かつてあった社会党はこういう政党で、と、いろいろ話をして、90年代にこう変わっていって……、という話をするのですが、授業が終わったあとに、たいてい何人かの学生が「わかりました。社会党というのは保守党なんですね」と言うわけです。

 護憲だからしょうがないんですね。守っているのだから保守。自民党はずっと改革だと言って、新自由主義的な主張をしているから革新的な政党となるわけです。こういうのがいまの学生の出発点なのです。昔ながらの「保革の対立」と言ってもまったく通じないのです。

 だからもっと整理をしていって、右の政党、左の政党、極右の政党、そういった捉え方をまずはしていく。そこで終わる必要はないのですが、まずは左右軸を私たちの政治的な言語の中に取り戻すことをしていかないと、選びようがないと思っています。

Q:私、業務があってきょう上京しまして、若い人たちに、「きょうこういう立憲のデモクラシーの会があるよ」というので推薦されて、この場に来て、非常に勇気づけられています。先に質問をすると、ちょっと水をさすようで申し訳ないですが、女性議員はそんなに信頼できるのかということを一応聞きますが。私自身は県政のレベルで野党の女性議員がいない県にいます。が、この夏向けの選挙で、僕はあまりやっていませんが、野党候補を勝利させるような動きを一生懸命やっている仲間がいます。僕はそれに非常に期待をしているんですね。

 それと3・11以降、地方にいろんな人が移って来られました。いろんな生活をしておられます。女性がすごく活躍していて、すごくかっこいい発言をされます。議員に立候補されるとかね。やっぱり女の人ってネットワークあるなとか、スマートフォンを使いこなすなというイメージで見ていて(笑)。ちょっと先生のイメージと、僕が地方で見ている女の人、まあ元都市部の人のイメージとちょっと違うなという印象を持っているんですけど。

 本題ですが、いま政権の中で閣僚等になられている女性の議員さんと入っておられない人がおられますよね。どっちが骨太なのか、僕にはよくわかりませんが。政権に近づいた場合にですね、志向が変わってしまうのかということをお聞きしたい。

小原:ほかにはありますか?

Q:回路をつなぐというところの、議員と人々の関係性というところで、人々の声を聞くとか、何かの利益を双方向的に見出していくということなんですけども、自民党の昔の55年体制のときなんかは、議員と我々の関係というのは、要するに親分、子分の関係ですよね。税金の使い方とか使われ方という問題において、利益誘導のような形をとっています。そのようなところがすごく多いと思うんですよ。政治というものはすべて。もちろんその中でそれぞれの大多数の利益になればそれでいいと思うんですが、また個人の尊厳を損なうとか、そういう部分もありますよね。それでこの利益誘導型のこの親分子分の関係が、これからも続いていくんじゃないかな。例えば女性でも、男性でもやはり考え方としては同じだと、一人の個人だと思うんですよね。人間だと思うんですけど、半々にするのはいいと思うんですけども、現実にいまの利益誘導型の政治をやっている限りは自分たちで決められますから、それに学問上は納得するかもしれないけども、実際には進みにくいと思うんですよね。進んでくれればいいと思いますけども。ぜひともそのへんのお話をもう少し聞きたいです。

女性:先ほどのご質問に、「女性がそんなに信頼できるのか」という発言がございました。私は、じゃあ男性は(信頼できますか)と思うんです。(会場・笑)。

男性:僕は男より女のほうがいいと思っています。

女性:ですからそういう発想で考えるということ自体が間違っている。いずれにしても玉石混交の政治家ですから、それだけ半々になってくれば、それぞれいい人たちも出てくるんではないか。そういう希望を持ちますので、半々という発想で進めていただけたら、そういう方向性を示してくださればとてもうれしいと思います。よろしくお願いします。(会場・拍手)。

女性議員を増やせば、より良い男性議員が選ばれるように

三浦:私のかわりに答えてくださって、ありがとうございます。「女性議員を増やしたほうがいい」と言うと、必ず言われるのは、「女性議員を増やすメリットって何ですか?」です。その前に、「男性議員だけで決めているメリットは何ですか?」。これに答えていただかないといけませんね。私には答えが浮かばなくて困っています(笑)。

 女性議員を増やすと、当然男性議員は減ります。つまり男性の競争が激しくなります。だからこそ、男性議員は嫌がるのですが、 ・・・続きを読む
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筆者

三浦まり

三浦まり(みうら・まり) 上智大学法学部教授

上智大学法学部教授.カリフォルニア大学バークレー校にてPh.D. (政治学)取得.東京大学社会科学研究所機関研究員を経て現職.専門は現代日本政治論,福祉国家論,ジェンダーと政治.主著に『私たちの声を議会へ:代表制民主主義の再生』(岩波書店,2015年),『日本の女性議員:どうすれば増えるのか』(編著,朝日選書,2016年),『ジェンダー・クオータ:世界の女性議員はなぜ増えたか』(共編著,明石書店,2014年),Welfare Through Work: Conservative Ideas, Partisan Dynamics, and Social Protection in Japan (Cornell University Press, 2012).

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