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参院選、問題の多い与党がなぜ勝ちそうなのか?

奇妙に静かな、「新権威主義」体制下で初の選挙

小林正弥 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

政策では与党が勝てない選挙?

 参議院選挙の終盤予測では、いわゆる改憲4党が3分の2を確保する勢いという。安倍首相は選挙戦で改憲を語らない戦略を取っているが、発議可能な議席をとれば、選挙後にはいよいよ改憲を目指して動き始めるだろう。

 これは政治的な趨勢である。前回の参議院選挙(2013年)や衆議院選挙(2014年)の際、私はこの選挙は「歴史の分岐点」と書いた。その分岐点で与党が勝利したのだから、その流れを逆転させるのはそもそも相当に困難なのである。

20160621拡大党首討論はおこなわれたが……=2016年6月21日
 理性的に政治的争点を考えてみれば、今回の選挙で与党が勝利するのは難しいはずだ。

 安倍政権はアベノミクスで支持を得てきたが、経済的にはその失敗がデータによって明らかになっている。だから政権は消費税の増税を延期した。これは前回の衆院選などでの公約に反している。

 格差も増大している。年金運用でも巨大な損失が明らかになり、その公表を参院選後に延期している。金銭スキャンダルで甘利明経済再生担当大臣が辞任した。他の様々な疑惑も次々と一部では報じられており、政治的な腐敗が進行している。大騒ぎになった舛添東京都知事も与党が推薦した知事だ。

 こういった問題が選挙戦で正面から議論されてテレビなどで大々的に報じられれば敗北してしまうから、与党は政策問題にあまりふれたくないのだろう。今回の選挙戦で経済・社会政策は政党間で本格的に議論されていないように見える。安倍首相は政策問題を詳しく語らず、もっぱら民共連合の批判に力を注いでいる。

 でも今回の選挙は政権選択選挙ではないから、野党が勝っても政権が代わるわけではなく、政権担当能力が問われることもない。だからもっとも大事な論点が憲法問題であることは明らかだ。実際に野党連合は安保法における立憲主義の無視や改憲の危険を訴えているが、与党はその争点を隠そうとしていて、この問題性を多くのメディアもさほど大きく報じてはいない。

 論点がわからないのだから、これでは人々の政治的関心は盛り上がらない。さすがに各紙も改憲発議が可能となる3分の2というラインに関して報じてはいるのだが、未だにこの選挙の歴史的位置に気づかない人々が多い。だから棄権も相変わらず多そうだ。

奇妙な選挙戦――何事もないかのような静けさ

 こう見てくると「なぜ与党が勝ちそうなのか?」という疑問が湧いてくる ・・・続きを読む
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筆者

小林正弥

小林正弥(こばやし・まさや) 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

1963年生まれ。東京大学法学部卒業。2006年より千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。千葉大学公共研究センター共同代表(公共哲学センター長、地球環境福祉研究センター長)。専門は、政治哲学、公共哲学、比較政治。マイケル・サンデル教授と交流が深く、「ハーバード白熱教室」では解説も務める。著書に『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう(文春新書)、『サンデル教授の対話術』(サンデル氏と共著、NHK出版)、『サンデルの政治哲学 〈正義〉とは何か』(平凡社新書)、『友愛革命は可能か――公共哲学から考える』(平凡社新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『神社と政治』(角川新書)など多数。共訳書に『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(ハヤカワ文庫)など。

 

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