記憶と教訓をどう伝えていくか
2016年07月20日
ホロコースト生還者でノーベル平和賞受賞者のエリ・ヴィーゼル氏が7月2日、死去した。87歳だった。少年時代の強制収容所での体験を綴った『夜』をはじめ数多くの著書を発表し、平和・人権運動にも熱心だった。
For the dead and the living, we must bear witness.
彼が訴えたのは、ナチスにより殺戮された600万人のユダヤ人と数百万人の非ユダヤ人を記憶するだけでなく、その記憶と教訓を将来の世代に伝えることの大切さだった。
そしてヴィーゼル氏は、ホロコーストの教訓を語るだけでなく、カンボジア、ボスニア、ルワンダなどでの大量殺戮にも抗議の声をあげ続けた。彼にとって、“愛”の反対語は“憎しみ”ではなく“無関心”だった。
私は20年ほど前、ホロコーストに関するインタビュー集を書くため、生還者や歴史家、そしてその教訓を伝える人々を訪ね歩いた。戦後「ナチハンター」として生きた故サイモン・ウィーゼンタール氏、米議会唯一のホロコースト生還者だった故トム・ラントス下院議員、杉原千畝氏のビザで救われたシカゴマーカンタイル取引所名誉会長リオ・メラメド氏など、思い出は尽きない。
「裁判が開かれれば、50年前の犯罪であっても、人々は報道を通してその全容を知ることができます。それは、将来の殺人者に“犯罪者は最後に必ず裁かれる”という警告を発するためにも重要なのです。もしこの先、ホロコーストのような悲劇が繰り返されるとしたら、それは将来の殺人者ではなく、歴史の教訓を伝えなかった私たちの責任なんですよ」
ヴィーゼル氏にも、彼が教鞭を取っていたボストン大学で面会し、クラスも聴講させてもらった
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