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[7]近代化と韓国の将来ビジョン

ケネス・ルオフ ポートランド州立大学教授

巨大な太極旗拡大2002年のサッカーワールドカップ。巨大な太極旗が客席に広げられた=撮影・朝日新聞社
 私が2013年にはじめて訪れたときと、2015年9月に訪れたときとでは、近現代史博物館の第4展示室はすっかり様変わりしていた。

 以前は、民主化された韓国に新たな機会をもたらした、ふたつの国際的スポーツ大会に重点が置かれていた。すなわち1988年ソウル五輪と2002年サッカーワールドカップ(日本と共催)である。

 近現代史博物館のキム理事は、その変化について、次のように説明してくれた。

 1988年ソウル五輪と2002年ワールドカップの開催は、韓国国民にとって重要なものでした。このふたつの国際的スポーツ大会を主催することで、われわれは韓国がみごとに経済的発展と政治の民主化をなしとげたというメッセージを世界に送ったのです。こうして、われわれは韓国が国際社会の有力メンバーであることを明らかにしました。さらに重要なのは、韓国人がこのふたつの国際スポーツ大会を主催したという、すばらしい共有記憶をもったことです。1988年ソウル五輪と2002年ワールドカップによって、韓国国民のきずなは深まりました。
 それでも、われわれは第4展示室を変えようと思いました。スポーツへの関心を減らして、その代わりに民主化プロセスや経済危機、そして朝鮮の再統一に関する一連の展示を新たに入れることにしたのです。

5000年の歴史がつくる国のかたち

 第4展示室でもっとも興味深い面は、近現代史博物館が韓国の新たな国のかたちを示そうとしていることだといってよいだろう。

 本稿で取りあげているさまざまな博物館は、多かれ少なかれ、国のかたちを示そうとしている。そして、共有された歴史は、けっきょくのところ、国のかたちを基礎づけるのに役立つ。

 朝鮮(韓国)の国のかたちは、さまざまに表現されているが、近代の国民国家は5000年とされる文化的(ないし民族的な)持続性を継承してつくられている。

 たとえば、独立記念館のガイドブックには、この博物館の第1展示室「韓国人の起源」が目指しているのは、「5000年の歴史の扉を開く」ことだと説明されている。日本帝国主義と闘った1919年の三一独立運動に象徴されるような、朝鮮民族の抵抗を把握するのに、なぜそれまでの5000年の歴史を理解しなければならないか。このガイドブックには、そのことが、苦心しながら論じられている。 ・・・続きを読む
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筆者

ケネス・ルオフ

ケネス・ルオフ ポートランド州立大学教授

1966年、米国ニューヨーク州生まれ。ハーバード大学を卒業、コロンビア大学で博士号を取得。専門は日本近現代史。1994~96年、北海道大学法学部の助手・講師をつとめる。2004年、大佛次郎論壇賞受賞。現在、オレゴン州のポートランド州立大学教授兼日本研究センター所長。 訳書に『紀元二千六百年――消費と観光のナショナリズム 』(朝日選書、訳・木村剛久)、『国民の天皇――戦後日本の民主主義と天皇制』(岩波現代文庫、監修・高橋紘、訳・木村剛久、福島睦男)。